
4月1日施行の改正物流法、改正トラック二法により、荷主等が長時間の荷待ちや無償の付帯業務の改善に取り組む努力義務や責任が拡大した。法改正に伴い、これらの違反原因行為の是正指導を行っているトラック・物流Gメン活動への関心も高まっている。今回、全国ではじめて、荷主等パトロールを始めたことでも知られる、中国運輸局貨物課の田中幸久課長に話を聞いた。その2は、トラック・物流Gメンの改組による権限拡大、広がる活動領域、実際のGメン活動と現場の改善事例などを語ってもらった。
※インタビューは3月11日に実施、田中氏は4月1日付で、茨城運輸支局長に就任している。(本文末の略歴参照)
■トラック・物流Gメン改組、倉庫を含めて物流全体のGメンに役割拡大
――トラックGメンの権限拡大と荷主等パトロールの管外への拡大について教えてください。
田中 中国運輸局管内の荷主等パトロール立ち寄り個所数が約1000か所を達成した頃には、広島の中心部にいる営業所や支店の大半についても訪問できていました。そこで気づいたのは「是正指導すべき荷主の意思決定部署は管外にいる」ということでした。地元の荷主等の拠点のみ指導する形だと、トラック事業者が本当に解決してほしい問題は解決しないのではないかという問題意識を持ったのです。
そこで本省にも相談しところ、本省も同じ思いだったようで、2024年6月に制度が改正され、是正指導のうち、働きかけ、要請の対象となる荷主等選定の権限が地方運輸局に委任され、さらに管外の荷主等に対しても是正指導ができるようになりました。続いて同年11月に、トラックGメンは「トラック・物流Gメン」に改組され、トラック協会にも「Gメン調査員」が配置されました。
貨物は地元から全国に運ばれるし、全国から地元にもやってきます。当然、発荷主等・着荷主等は全国にいるわけです。困りごとを持つトラック事業者を管轄する地方運輸局の担当Gメンが、事案の処理に対して責任を持てるようになりました。近畿での合同パトロールに向けて西日本4地方運輸局(近畿・中国・四国・九州)の協力体制もできていたこともあり、中国運輸局のトラック・物流Gメンの活動範囲は大きく広がりました。
――トラック・物流Gメンへの改組により、何が大きく変わりましたか?
田中 倉庫業者の皆様のお悩みを聞き、荷主等への是正指導に結びつけることができるようになったことです。中国運輸局では、倉庫業は交通政策部環境・物流課が、トラックは自動車交通部貨物課が所管しています。それまでも2つの部署は協力してきましたが、倉庫担当のGメンとトラック担当のGメンと連携できるようになり一緒に倉庫業の現場に足を運ぶこともできるようになりました。
また、トラック・物流Gメンの改組に先駆け、本省では2023年10月に、総合政策局が担っていた物流行政を自動車局に移管して、自動車局は名称を物流・自動車局に改称しました。物流政策課と貨物事業課が隣り合わせになり連携がとりやすくなりました。地方運輸局でも、それが実現しているように思います。
また、物流効率化法の附帯決議の中に、トラックGメンの権限を強化して、物流全体のGメンにしようという項目があります※。それが、トラック・物流Gメンに、世の中から求められている役割だと思います。
※物流効率化法に対する附帯決議 四
国土交通省におけるトラックGメンの機能を強化し、荷主や元請事業者等への是正指導を徹底すること。これに向け、全国及び地方貨物自動車運送適正化事業実施機関を活用し、貨物自動車運送事業者からの情報収集や、荷主や元請事業者等の違反原因行為に係る調査等を補完する体制について、調査員証の発行などにより、強化、明確化を図ること。また、トラック運送事業の近代化や、物流のサプライチェーン全体の取引の適正化に向け、トラックGメンを物流産業全体の健全化に向けた組織とすることや、全国及び地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の業務の拡大や体制の抜本強化について、検討を進めること。(※脚注は編集部作成、以下同じ)
※物流効率化法に対する附帯決議(全文)
――小さな名称変更ですが、権限は大きく拡大したのですね。
田中 役所で定められた権限としては、私はトラック行政の担当なので、説明する場合はトラックの話をする。物流政策の話は物流政策担当がするべきというミシン目がありました。
ただ、説明を聞く人からすればお困りごとに応じて、どちらも説明してもらった方が便利だと思います。トラック・物流Gメンとなったことで、Gメンという器にトラックと物流、いわゆる物流効率化法を担当する部署と、トラック法を担当する部署が収まり、日常から情報交換できるようになりました。そのため説明の際、トラック法、物流効率化法、どちらの説明をしたとしても許容されるようになったと考えています。荷主等に対して説明できる分野が広がったのは、私の中ではとても大きい意義があります。

トラック・物流Gメン改組の概要(出典:国土交通省2024年11月1日プレスリリース)
――荷主等に対するアプローチの変化を時系列で教えてください。
田中 2018年のトラック法改正まで、国はトラック事業者が違反を犯さなければ荷主等に対してアプローチできませんでした。もしトラック事業者が違反を犯し監査に入り、その違反行為が荷主等に原因があるものとしてアプローチしようとしても、契約を守りたいトラック事業者から情報が得られませんでした。しかし法改正により附則が設けられ、トラック事業者による違反のあるなしにかかわらず、荷主等によるトラック事業者の違反の原因になる行為の疑いがあればアプローチできるようになりました。※
※貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案(附則は4~6頁)
ただし、この時点ではGメンのような存在がいたわけではなく、本省担当者は通常業務に加えて荷主等に対するアプローチを行わなければいけませんでした。実績はゼロではありませんでしたが、トラック事業者からはもっと踏み込んだ対応が求められていました。トラックGメンが創設されてから、荷主等へのアプローチが積極的にできるようになりました。
さらに、トラック・物流Gメンになったことで、トラック事業者のお困りごとに加え、倉庫業者のお困りごとについても荷主等に是正を指導することができるようになりました。倉庫業者には、「自分達は物流事業者なのに荷物を発送する、受け入れるという点から荷主のように扱われる」というジレンマがあったと関係者からお聞きしたことがあります。
物効法により倉庫業者は物流事業者だと明確に位置付けられ、トラックGメンがトラック・物流Gメンに組織改正されたことで、倉庫業者が抱えるお悩みを解決し、それによって物流全体の課題解決に結びつけることができるようになったと思います。
――倉庫業ではどんな課題があるのか教えてください。
田中 倉庫業者の皆さんからは、「トラックはGメンができたから荷主等の対応が変わったが、現場による附帯作業を我々がするよう求められるなど割を食っている」というお声を聞きます。また荷主指定による複数のパレットサイズの混在、荷主から予告なく入庫貨物がトラックで到着するため、対応が間に合わず荷待ちになってしまうなど、個々の努力では限界がある課題も存在します。
物流効率化法による物流効率化努力義務判断基準では、確かに倉庫業者には「発送先別に仕分けしたうえでの引渡し」「荷主等からパレット使用の申し出があった場合の協力」などが努力義務として明示されています。
しかし、これらは「荷主等から対価を得て行うべきもの」とも明示されています。また倉庫に荷物を寄託していた場合も、寄託者が荷主等として、荷待ち時間等の短縮について義務を負います。さらに、物流子会社や3PL事業者が荷主等から請け負った契約内容を叶えるため、自らがトラック事業者に荷物を預けたり、また逆にトラックから貨物を受け取ったりしても、彼らは荷主とはなりません。物流効率化の義務は、彼らに物流業務を委託している荷主が負います。その点なども荷主に対して説明を行うようになりました。
――同時に、トラック協会に「Gメン調査員」も配置されましたね。Gメン調査員との連携はどうですか。
田中 Gメン調査員は、トラック法に定める「地方適正化事業」を推進する「地方貨物自動車運送適正化事業実施機関」の指導員から選任されます。指導員はトラック事業者のもとを訪れて指導を行う「巡回指導」が主な業務になっており、その過程でトラック事業者から出てくる愚痴などを聞いてくれている重要な存在です。
あるGメン調査員からは、「以前は指導員としてトラック事業者の悩みは聞けるが、自身が制度を変えたり、荷主にアプローチできないことでジレンマを抱えていた。ただGメン調査員ができたことで、収集した情報がトラック・物流Gメンに届き、トラック・物流Gメンが動いてくれることで解消された」とおっしゃっていただけました。
逆に、トラック・物流Gメンも日頃巡回指導員として収集されている情報には助けられています。広島は特に連携が進んでおり、トラック事業者の信頼も厚い手練れの巡回指導員兼Gメン調査員がいて、その方が相談したいというトラック事業者と我々を引き合わせてくださることもあります。
さらに、我々がその相談を元に荷主等のもとにパトロールに出向くことで現場が改善されると、端緒として話を聞いてくれたGメン調査員の信頼もますます高まり、より深いお悩みが寄せられ、我々に届き、具体的な解決に向け動ける。という有効な循環が生まれるので、両者はとてもWin-Winな関係にあると思っています。
■改善事例の共通点は「しゃにむに説明を続ける」姿勢
――トラック・物流Gメン活動を続けてこられて、現場はどう変わりましたか?
田中 荷主等パトロールが注目され、物流を理解したうえで、トラック事業者側に立った活動をするという我々の姿勢をご理解いただけたおかげか、プッシュ型情報収集で電話をしなくても、トラック事業者からご連絡いただいたうえ、深刻な悩みが寄せられるようになりました。私がご指名いただくこともありますし、名刺交換させていただいた方から、メールでご相談をいただくことも増えました。あと、発荷主さんからの相談も増えました。
商売の相手方の固有名詞や改善を求めたい内容など、今まで喉につかえていたものを吐露いただけることも増えました。今まで役所に話すことがはばかられた情報をいただけるようになったので、トラック・物流Gメンも設立当初に比べると、信用していただけるようになったと感じています。
ただ、いただいた相談に対しては、やはり結果をださないといけないと思っています。話を聞いて事務的に文書を出して終わりではなく、文書を出さないまでも、パトロールの段階できちんと意思疎通でき、課題感が共有され、指導する前に改善され、トラック事業者が「現場の雰囲気が良くなった」と感じられるのが、当事者にとって一番良い形だと思います。
是正指導の件数は確かに活動成果の指標の一つで、我々がちゃんと活動していることを示すことが、それで理解につながると思います。一方で、時間と手間がかかり、一気に変えられるものではないとは思いますが、実際に解決した事例を積み上げて共有できれば、関係者が「自分でもできる」と認識できて、我々が動く前に自発的に状況は改善されていくと思います。
自分自身としては、テレビや紙面などで露出させていただくことで活動していると評価いただくこともありますが、相談された要望を十分にかなえられていないなという課題感を常に持っています。どこかで満足して良いものでもなく、常に改善のための方法と関係者に響く説明の仕方は考えていかなければならないと感じています。

荷主パトロールの一例(出典:中国運輸局公式X)
――荷主等パトロールを続けて感じる、荷主や現場の変化を教えてください。
田中 荷主等に、説明をどんどん続けていくうちに、改善されている事例、改善に向けた担当者のご苦労などを教えていただく機会も増えました。皆さんに現場の改善を進められた一番の理由はなにかと聞くと「やっぱり大きな要因は、法改正だ」といいます。荷主等に荷待ち削減などの物流効率化の責任を義務付けたことで、それを理由に、もともと現場の改善の必要性を認識していた荷主等の物流担当者が動きやすくなったという面もあるように感じています。
さらに、我々Gメンの話を聞きたいという荷主等も多くいらっしゃって、セミナーでの講演をお願いされる機会も増えました。実際に現場で監視・指導を行うGメンの視点や我々が現場で見聞きしてきた情報を通じて、物流事業者の本音を知りたい、理解したいという担当者も増えているように感じます。このように、トラック・物流Gメンによる現場での監視・是正指導が、法律改正の目的を果たすうえで役に立つよう、効果的に活動していきたいと思います。
そのためにも、トラック・物流Gメンとしては、改正された法律により何が変わるのか、そもそもなぜ変えなければいけなかったのか、現場の皆さんはどうするべきなのかといった法改正の背景や趣旨、改正に向けて進められた議論や発言者の思いをちゃんと理解しながら、現場で効果的に説明することが、課題だと思います。「現場の声」「現場からいただいたトーン」「現場からいただいた認識」に基づいて、ちゃんと同じ目線で応えていく、説明していくことが必要だと実感しています。
――改善が進んでいる事例に共通点はありますか?
田中 現場を見て、関係者に話を聞いていて思うのは、改善事例は、「効果的な解決策、薬でいえばすごい特効薬を投入して、解決しているものではない」ということです。共通していると思うのは、「諦めずに、時間がかかってもいいから、しゃにむに説明をし続ける姿勢」です。
相手が理解できなくても、また自分にメリットがないからといって関心を示さなくても、あきらめずに説明し続けることが最終的には相手に理解され、相手のやる気に火をともし、関係者が腹落ちしたうえで、互いにリスクとメリットを分担しあって進められるようになるのだと思います。
確かに手間も時間もかかるのですが、結果的には手戻りなく長期的に改善が継続されていくと思うので、今も私が物流に関して説明させていただく際は、「相手の立場を認識したうえで、最初の段階から平等に忌憚なく話合うべき」とお話しています。
■田中幸久(たなかゆきひさ)氏の略歴
秋田県出身
1992年4月:運輸省大臣官房人事課 採用
2003年4月:政策統括官付政策調整官付(モーダルシフト等予算担当)
2010年10月:自動車局自動車情報課(自動車検査・登録システム予算担当)
2017年10月:国土交通省自動車局総務課 バス高速輸送システム推進官
2019年4月:国土交通省自動車局旅客課 課長補佐(公共交通・コロナ対策予算担当)
2021年4月:独立行政法人自動車技術総合機構企画部経営管理課 課長(併任同機構基盤システム更改担当)
2023年4月:中国運輸局貨物課 課長
2026年4月:関東運輸局茨城運輸支局 支局長
趣味は音楽。広島のブラスバンドやゴスペル団体にも所属し、市内各イベントにも参加。さらに一般公募で養成講座を受講のうえ広島市観光ボランティアガイドへの登録を許され、広島を訪れる修学旅行生への案内なども務めた。
(取材・文責 志鎌廣仁)
■トラック最前線/中国運輸局・田中課長が語る「トラック・物流Gメン」その1『荷主等パトロール誕生秘話』
https://www.trucknews.biz/article/s052530/
■トラック最前線/中国運輸局・田中課長が語る「トラック・物流Gメン」その3『省庁間連携の現場報告』
https://www.trucknews.biz/article/s060730/
■トラック最前線/中国運輸局・田中課長が語る「トラック・物流Gメン」その4 『取適法・改正トラック法とトラック業界の今後』
https://www.trucknews.biz/article/s061050/
■トラック最前線/中国運輸局・田中課長が語る「トラック・物流Gメン」番外編『中国運輸局への異動秘話』
https://www.trucknews.biz/article/s061550/
国土交通省/トラック・物流Gメンが活用「荷主への是正指導指針」公開