2024年問題の実態/第1回「運べている」に潜むリスク。データで迫る輸配送リソースの切迫度

2026年07月08日 16:02 / 経営

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物流の持続可能性を脅かす「2024年問題」の本格化、そして2025年度から施行された改正物流効率化法をはじめとする「物流関連二法」。これらを受け、発着荷主や物流事業者の意識と現場はどう変わったのか。この連載では、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が23月3日~10日に実施した「物流2024年問題の影響と現状に係る実態調査」のデータをもとに、経営者が今、直視すべき物流のリアルを紐解いていく。

調査は製造業150名、物流事業者85名、流通業41名、その他23名、合計299名から有効回答を得ており、売上高10億円以上の企業が全体の約9割(88.7%)を占める経営層向けの統計データとなっている。第1回は、現在の営業用貨物自動車を使った「輸配送量の見通し」と、見せかけの安定の裏に潜む「輸送の切迫度」について解説する。

荷主と物流現場で乖離する「輸送実態」への認識

2025年度の営業用貨物自動車を使った輸配送量(トンベース)の見通しについて、2024年度と比べてどのようになるかを尋ねたところ、全体では「増える(34.4%)」が「減る(21.4%)」を上回る結果となった。特に、流通業(卸売業)においては半数近い48.8%が「増える」と回答しており、荷動き自体は依然として活発である。

しかし、その輸送を支える「輸送実態」の見通しに目を向けると、荷主経営層が警戒すべき「認識のギャップ」が鮮明に現れている。

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営業用貨物自動車を使った輸送実態見通し(出典:JILS調査9頁)

荷主企業の認識では、製造業(64.8%)、流通業(68.3%)が「引き続き運べている」と回答。一方で、物流事業者で「引き続き運べている」との回答は41.2%にとどまり、「運びにくくなった」が46.0%に達した。この数字を踏まえて、全体では58.5%が「引き続き運べている」と回答している。

荷主企業側が「問題なく運べている」と楽観視しているのに対し、物流現場を支える物流事業者側は、リソースの限界という切迫感が急激に高まっている。前回調査との比較では、「引き続き運べている」と回答した割合は前回調査から1.4%減少し、「運びにくくなった」の割合は0.4%増加している。

また、荷主企業と物流事業者の比較では、物流事業者・荷主企業ともに「引き続き運べている」の回答は微減傾向にある。物流事業者と荷主企業では、輸送実態見通しの認識で2割強のギャップがあり、物流問題に対する荷主の意識の差が影響している可能性がある。

「三大都市圏から九州着」の長距離輸送に限界の影

この切迫感は、特定の地域内や地域間輸送でより顕著に現れている。地域内輸送においては、前回調査と比較して「東北」や「九州」で荷物が運びにくくなった(または運べなくなった)とする割合が大幅に上昇した。これは需要過多に加え、地方部において経済合理性が合いにくくなっていることが背景にあると推測される。

さらに深刻なのが「地域間」の長距離輸送だ。調査によると、関東・近畿・中部の三大都市圏を発地とする長距離輸送、なかでも「九州着」の輸送ルートにおいて持続可能性が危ぶまれている。ドライバーの労働時間規制が厳格化するなか、中継拠点の設置といった配送ルートの見直しや、リードタイム延長の受け入れなど、従来のサービスレベルを変更しない限り「物理的な距離の壁」を越えることが困難な局面に突入している。

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地域内の荷物が運びにくくなった、または運べなくなった地域(出典:JILS調査11頁)

「運べている」の裏にあるサービスレベル低下とコスト負担

なぜ荷主の多くが「引き続き運べている」と感じられるのか。その裏側にある実態をクロス集計で紐解くと、決して平時と同じように運べているわけではないことが分かる。

2025年度、個別のケースで見た場合、営業用貨物自動車を使った地域間の荷物が運びにくくなったまたは運べなくなった月はありましたかと尋ねたところ、「特にない(47.6%)」という回答が半数近くあるものの、運びにくさを実感した層の回答が「12月(18.4%)」と「8月(7.0%)」に集中している。年末の季節需要とお盆の夏季休業が影響していると思われ、ドライバー不足と労働時間規制により繁忙期へ対応しきれず、供給が切迫していることが推察できる。前回調査でも、12月が最も切迫していた。

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出荷遅延や積み残し(車両確保不可)、運送会社から輸送の断りが発生した頻度(出典:JILS調査31頁)

では、どの程度、物流現場は切迫しているのか。別の視点と組み合わせて分析した。

出荷遅延や積み残し(車両確保不可)、運送会社から輸送の断りが発生した頻度について、自社の状況に最も近いものを選択してもらった。「引き続き運べている」と回答した事業者のうち、実は47.9%が「年に数回」、10.7%が「月に数回」の頻度で出荷遅延や輸送の断りに直面している。出荷遅延や積み残し、輸送お断りが「全くない」との回答は23.4%に留まり、「年に数回」の頻度は49.5%に及んでいる。

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定期便で賄えず「スポット便」を手配する頻度(出典:JILS調査32頁)

定期便で賄えず「スポット便」を手配する頻度を尋ねたところ、スポット便の手配が「全くない」との回答は12.1%に留まり、「月に数回」以上の頻度での手配は47.7%に及んでいる。「引き続き運べている」との回答の裏で、約4割が月単位以上のスポット手配に依存しており、低積載・非効率な配送により、物流全体の効率性を下げ、切迫度をさらに高める負の連鎖を招く恐れがある。

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リードタイムを伸ばす頻度や配送頻度を下げる割合(出典:JILS調査33頁)

また、リードタイムを伸ばす頻度や配送頻度を下げる割合を調べたところ、7割近い企業がリードタイムの延伸や配送頻度の抑制を余儀なくされていた。「引き続き運べている」企業であっても、そのうち「年に数回」は39.5%、「月に数回」以上は22.2%の頻度で納期や頻度といったサービスレベルを落として対応しているのが実態だ。

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主要事業所における保有車両台数に対するドライバー充足率(出典:JILS調査33頁)

さらに、自社の主要事業所における保有車両台数に対するドライバー充足率も調査した。ドライバー充足率が「充足」・「ほぼ充足」と回答した割合は34.1%に留まり、42.4%が「やや不足」・「不足」・「深刻」と回答している。「わからない」が23.5%を占め、自社リソース状況を把握できていないことは潜在的な不足層になり得る可能性がある。

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車両・人員不足を理由に輸送依頼をお断りした頻度(出典:JILS調査34頁)

加えて、車両・人員不足を理由に輸送依頼をお断りした頻度を尋ねたところ、物流事業者の61.2%が「車両・人員不足を理由に輸送依頼をお断りしたことがある」と回答。主要顧客や条件に合う荷物を「選別」することで、事業としての『運べている状態』をかろうじて維持している状況がうかがえた。

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自社車両で対応できず「傭車(再委託)」に出す頻度(出典:JILS調査34頁)

また、自社車両で対応できず「傭車(再委託)」に出す頻度を聞いたところ、物流事業者の約4割が再委託を拡大しており、自社アセットだけでは荷主の要求に応えられない実態がうかがえた。「引き続き運べている」との回答の裏で、傭車(再委託)が「大幅増」・「やや増」との回答が25.8%に及び、外部リソース活用が増えている。

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不採算荷主との契約解除・縮小(出典:JILS調査35頁)

さらに、不採算荷主との契約解除・縮小を調べると、物流事業者の64.7%が不採算荷主との契約解除・縮小をすでに実施または具体的に交渉中と回答した。「引き続き運べている」との回答の裏で、すでに実施・交渉中の荷主があるが62.8%に及び、物流リソースが切迫する中で採算性が悪い荷主は取引継続が危ぶまれる可能性がある。

経営者に求められる「持続可能なパートナーシップ」への転換

今回のデータが示しているのは、従来の輸送体制のまま「運べている」企業はごくわずかであるという事実だ。多くの企業が、スポット便によるコスト増、あるいはリードタイム延長という名のサービスレベル低下を受け入れることで、かろうじて供給網をつなぎ止めている。トラック運送事業者にとっては、不採算な輸送や無理な条件を断り、自社リソースを守る「選別」の経営判断がすでに始まっている。一方で、荷主企業にとっては、自社の物流がどのような無理やコストの上に成り立っているかを把握し、一刻も早くサービスレベル(納期・頻度)の適正化や物流効率化へ舵を切ることが、生き残りの絶対条件となる。

次回は、効率化のボトルネックであり、現場の負担に直結する「荷待ち・荷役・検品時間」のリアルと、そこに潜む認識のずれについて解説する。

物流2024年問題の影響と現状に係る実態調査

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