全日本トラック協会/適正原価設定の検討会に「地域単位での設定」「物価変動への対応」「水屋の是正指導」など意見提出
2026年08月26日 15:53 / 経営
全日本トラック協会は、8月26日に開催された第2回「適正原価の設定に向けた有識者検討会」で行われた関係者ヒアリングに参加し、「適正原価の制度設計および運用に関する意見・要望について」発表した。
現在、協会には約1500件の意見・要望が提出されており、今回はその概要について発表した。意見・要望は、「制度全般」「適正原価の構成要素」「運用等」「その他」の4つの項目で構成している。
■標準的運賃と実運賃は乖離、「特積み運送の別途設定」「車型・車種設定」必要
制度全般については、現行の標準的運賃を100%収受できている事業者が1割であり、実際に収受できる運賃との乖離があることを指摘。適正原価を上回る運賃を収受できるよう、実態に即した検討を行うことを求めた。
また、適正原価を設定する事業種別への配慮を要望した。特に、特積み運送は、一般貨物のような一運行のコストで判断するものではなく、集荷、幹線輸送、ラストマイル輸送など全体の運行を一体としたネットワークサービスであること、加えて一般貨物にないターミナル施設などの設置、維持管理コストも必要であり、一般貨物とは異なる原価構造であることから、別途設定すべきと述べた。
さらに、車型・車種の単位については、適正原価制度が許可更新の要件に含まれていることに鑑み、車両の大きさ、取扱い品目が多種多様である実態を踏まえ、標準的運賃のバン型や4車種のほか、冷蔵車・冷凍車・海上コンテナ輸送車、セメントバルク車、飼料バルク車、ダンプ車、コンクリートミキサー車、タンク車、トラック搭載型クレーン車等、車両価格や運送形態がバン型とは異なる様々な車型・車種の設定が必要と指摘した。
■「適正原価を設定する地域の単位」「実車率の考え方の整理」「物価変動への対応・改定頻度」の考慮
制度全般では、適正原価を設定する地域の単位も論点として提示した。地域の単位に関しては、標準的運賃の運輸局単位のブロックでは人件費や燃料価格などの地域差を反映できていない部分もあることから、ブロック単一ではなく、例えば、厚生労働省の地域別最低賃金額改定の際に用いられている都道府県ごとの目安のランクなどを参考とするなど、ブロック内の地域差や大都市圏区分を新たに加えるなど対応が必要となる。
また、日帰り運行や泊付き運行、長距離運行など多様な運送形態があり、実車率の捉え方もひとつではない。例えば、石油タンクローリー車は往路の運送が終われば、帰り荷があることはない。まずは、実車率の考え方を整理し、実態を踏まえて検討する必要がある。
さらに、現状、配送回数の削減や共同輸配送による物流効率化は、荷主とトラック運送事業者双方のインセンティブとなることもあるが、荷主主導の物流効率化は必ずしもトラック運送事業者が恩恵を受けていないものもある。適正原価制度によって、トラック運送事業者にもインセンティブが十分に働く仕組みえを考えるべき。
そのほか、適正原価の見直し頻度や改定手法については、他の公的制度でも採用されている賃金変動率や物価変動率などを用い、例えば1年ごとに改定するなど、定期的な見直しを求めた。
また、事業種別や業態によって、使用する車両の他、積載率、集荷・配達件数、走行距離、待機時間、荷役作業の原価構造が大きく異なるため、実態調査のデータをもとに、実態に即した制度設計をしてほしい。
■適正原価の構成要素「輸送の安全確保のための必要経費」「事業継続に必要不可欠な投資原資」
適正原価の構成要素としては、「輸送の安全確保のために必要な経費」「事業を継続して遂行するために必要不可欠な投資の原資」を加えることを要望した。
輸送の安全は最重要事項であり、安全に係る投資については適正な水準が保たれる必要がある。この観点から、安全確保に関する項目は幅広く考える必要があり、点検・車検日、講習費用等の関係法令の遵守に要する費用、任意保険、ドラレコ、デジタコ等の法令上全ての事業者に義務付けられているものでなくとも安全確保に欠かせない費用に加えて、適正診断の受診費用、労災事故防止のための昇降設備や保護ヘルメット、熱中症対策に係る費用も含まれるものと考える必要がある。
また、法定の運行管理者や整備管理者に加え、中小事業者における事業者全体の安全管理を司る安全管理者人件費を適正原価に計上すべきと求めた。
さらに、事業継続に必要不可欠な投資原資を要望した。トラック運送業は、就業者の半数以上が50歳以上という深刻な高齢化と担い手不足にあり、今後、安定した輸送力を確保するため、若年労働者の採用、他業種からの転職、外国人労働者の採用などあらゆる手段による人材の確保・育成に係る経費が必要となる。加えて、人材の確保・育成を進めるうえで、必要な労働環境改善に係る経費、運転免許等資格取得支援、採用活動費、労務管理等各種システム導入・維持費等が必要となる。
そのほか、大規模自然災害に対応したBCPにかかる経費。カーボンニュートラルへの対応等の経費の考慮を求めた。
■運送の原則は「車上受け、車上渡し」待機時間料、付帯業務料、高速道路料金の収受も課題
適正原価の構成要素における料金の取り扱いも主要論点として提示した。運送は「車上受け、車上渡しが原則」であり、運送部分は運賃、それ以外は料金としてそれぞれ収受すべきものである。加えて、この部分の境界が曖昧となり、待機時間料、積込・取卸料、付帯業務料等の料金について、収受できていないことも多い。また、標準的運賃の告示で定められている燃料サーチャージや荷主が負担すべき高速道路料金、特殊車両通行関係費用について、荷主の理解が進んでおらず収受できてないことも多い現状を訴えた。
また、燃料サーチャージ、高速道路料金について、確実な収受が可能となるよう義務化を検討することを要望した。加えて、運賃と料金は別建てであり、料金も荷主が支払うべきものとして、荷主の理解を進めるべきと述べた。
キャンセル料について、標準運送約款に規定されているものの支払いがされない現状がある。支払義務者が当然に支払っている消費者取引のように、トラック運送においても発注者である荷主が負担するような仕組みを検討すべきと要望した。
■運用で「ガイドライン」「相談窓口」が必要、多重取引構造への対応
運用面では、荷主との力関係が弱い中小事業者が運賃交渉に活用できるモデル運賃を示すべき。また、モデル運賃に加え、自社の原価を計算、管理できるシステムやツールも必要。加えて、荷主等との運賃交渉にあたってのガイドラインを国で作成するとともに、荷主等との運賃交渉が難航した場合に相談できる常設の相談窓口を設置するなど、国の協力の支援をお願いした。
現状、急な荷量の増加や繁忙期への対応のため、1次あるいは2次事業者などの協力会社との連携により対応することが一般的であることから、標準的運賃制度の利用運送手数料と同様に、元請事業者が収受する委託手数料を荷主が負担するという考え方を適正原価制度の中にしっかりと組み込む必要があうr。
また、実態にあわせて、受託(収受)と委託において、適正原価の算定式を区分して示すことには、賛成の意向を示した。
■適正原価に算定に求める期間は1年程度、ドライバーへの適切な賃金の支払いを担保
適正原価算定に用いる期間の設定については、市況変動への対応や決算期間との整合性などを考慮した期間として、例えば1年程度をすべきと述べた。
適正原価制度の目的は、トラック運送事業者の適正な運賃・料金に収受とトラックドライバーの適切な賃金の確保である。しかし、トラック運送業における取引関係において、荷主の立場が強く、コスト上昇分の価格転嫁が非常に難しい。トラックドライバーは全産業平均と比較して2割長く働く一方、賃金は1~2割低く、時間単価でみると3~4割も低い。にもかかわらず、毎年の賃上げ率は、全産業平均に及ばない状況にある。
適正原価の積算項目には「全産業の労働者1人当たりの賃金の額の平均額を踏まえた人件費」が入っており、加えて「労働者の適切な処遇の確保のために必要な措置を実施すること」が許可更新の要件に含まれていることから、トラック事業者が適正原価の水準以上の運賃・料金を収受し、ドライバーへ適正な賃金を支払うことで、確実にドライバーの賃上げを実現しなければならない。
ドライバーへの適正な賃金の支払いについては、許可更新時に人件費の額・割合等を確認することなどが考えれる。
■多重取引構造への対応「水屋、マッチングサイト」も違反原因行為の対象に加えるべき
その他の要望として、トラック運送事業者の中には、荷主との運賃交渉に活用している標準的運賃が廃止されることへの懸念や、適正原価制度が許可更新の要件となることから、どのような制度になるのか不安との声があると指摘。適正原価制度の公示にむけて、適正原価制度の趣旨、目的、内容について、トラック運送事業者のほか、荷主、利用運送事業者や水屋などすべての関係者に丁寧な説明と理解を求めた。
また、多層取引構造に関し、水屋、マッチングサイト事業者の存在が、実運送事業者の実勢運賃を下げているケースを指摘。該当する事業者による取引において、適正原価を下回る運賃・料金を提示しているような場合については、適正原価制度の定着を危うくする行為として違反原因行為の対象に加えるなど、是正指導の対象としてほしいと要望した。
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