東京商工リサーチ/「2024年問題」6割の企業がマイナス影響

2023年10月16日 17:10 / 経営

東京商工リサーチは10月16日、 「2024年問題に関するアンケート」調査の結果を公表、マイナス影響が生じると見ている企業が6割に達すると発表した。

調査は10月2日~10日にインターネットで実施したもので、有効回答5151社を集計・分析したもの。

まず「2024年問題」について、マイナス影響が発生すると回答した企業は全体の61.9%となる3189社。うち「大いにマイナス」が構成比19.3%(995社)、「どちらかというとマイナス」が同42.5%(2194社)となった。また企業規模別では、「マイナス」と回答した企業が、大企業で同68.0%(467社)、中小企業で同60.9%(2722社)と、大企業が中小企業を7.1ポイント上回った。

<2024年問題についての影響>

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産業別「マイナス」回答では、規制対象となる運輸業が72.7%、建設業が69.3%となったが、卸売業がこれを上回り、73.0%でトップとなった。卸売業は円滑な流通システムを構築する役割を担っており、運輸業の時間外労働の上限規制が適用されると、配送コスト上昇への対応や納品スケジュールの見直しなどが必要になり、流通の効率化に影響を及ぼすものと見ているようである。

<産業別・2024年問題の影響>

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また業種別では、食料品製造業が86.8%でトップ。食料品はバラ積み貨物が多く、荷待ち時間や荷役時間が比較的長い。受注から納入までの期限も短く、ドライバーの1日あたりの労働時間が長くなりやすい。時間外労働の上限規制が適用されると、今まで残業で対応できていた配送量を捌くことが難しく、配送計画を見直す必要が出てくる可能性が高い。

<マイナス影響の業種>

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「マイナス」の影響としては、「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が67.9%で最も多い。エネルギーや原材料の価格高騰によって業績が圧迫されているところに運賃や作業費などのコスト上昇が加われば、さらなる業績悪化が懸念される。

建設業と運輸業では、最高が「稼働率の低下による利益率の悪化」で57.5%(370社)と半数を超えた。次いで「物流・建設コスト増加による利益率の悪化」が48.0%(309社)、「稼働率維持に向けた人員採用による人件費の増加」が44.4%(286社)となった。すでに顕在化している「人手不足」がより深刻化し、人件費の上昇を懸念する企業が多い。また「時間外手当の減少による従業員の離職」が22.7%(146社)と、時間外手当の減少でドライバーの収入が減ることから、従業員の離職につながることを心配する企業も多い。

<マイナス影響の内容>

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一方、「プラス」と回答した企業の割合が最も高かったのは運輸業で8.5%。長時間労働が常態化したドライバーの労働環境の改善につながると期待する企業も少なくない。

「2024年問題」への対応として、運輸業は外国人労働者の在留資格である「特定技能」への自動車運送業の追加や、輸送手段を鉄道やフェリーなどに転換する「モーダルシフト」によって自動車による長距離配送を減らす目標も掲げている。一方、荷主側でも、段ボール箱などのバラ積み貨物をパレタイズし、荷待ち時間の削減やドライバーの荷役負担の軽減に取り組む企業もみられるなど、取り組みが進んでいる。

これまでは運輸業者や建設業者が様々な負担を長時間労働で肩代わりしてきた実態があるが、時間外労働の上限規制によって、今後は一部の産業、企業に負担を強いるのではなく、産業界全体で負担を共有し、軽減するための取り組みが進むことが期待される。

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