トラック最前線/BYD JAPANに聞く 国内トラック市場参入への戦略と取り組み
2025年11月14日 13:00 / トラック最前線
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ジャパンモビリティショー2025で、日本専用設計のEVトラック「T35」を世界初公開したBYD。2026年春に発売し、いよいよ日本のトラック市場に参入する。そこでビーワイディージャパンの石井澄人副社長にEVトラック市場をどのように見ているか、また今後の展開などについてお聞きした。(取材日:2025年10月29日)
<普通免許で運転可能な日本専用設計のEVトラック「T35」。シャーシとブレードバッテリーを一体構造にしたCTC (Cell to Chassis/セルトゥーシャーシ)の e-Platformを採用し、高い安全性と安定した航続性能を両立している。2026年春、800万円前後で発売予定>

徐々に拡大していくEVトラック市場
ーー BYDは2015年から日本にEVバスの導入を始め、日本のEVバス市場を牽引してきました。EVトラックでは逆に先行メーカーを追う立場になりますが、日本のEVトラック市場をどのように見ていますか?
石井 日本のEVトラックは、国内商用車メーカーが10年近く前に発売し、ここ数年では、複数のメーカーが続いています。ですが、どのくらいのトラックがディーゼルからEVに置き換わっているかというと、それほど増えていないというのが実感です。
その要因は、1回の充電で走行できるレンジ(走行距離)や価格の高さにあるのではないか。
そこで、そのあたりを我々なりに今回対応し、EVトラックのT35という商品として出させていただくことに決めました。それを事業者様がどのように評価されるか、これから見ていきたいと思っています。ただ、マーケットがどう進んでいくか、運送会社様もさまざまな課題を抱えているので、読むのが難しい。トラックのEV化は10年近く経ちますけれど、まだ本当に入口のところかなと思います。
【関連記事】BYD/小型EVトラック「T35」を世界初公開、26年春に約800万円で発売
ーー GVW3.5トン未満のT35は、普通免許で運転できるのもポイントですね。普通免許で運転できるEVトラックは、日野自動車が「デュトロZ EV」で先行し、現在はいすゞの「エルフミオEV」もあります。とはいえ、デュトロZ EVの発売から、まだ数年しか経っていません。市場開拓の余地が大きいように思います。
石井 実質的にまだ2年程度の実績しかない市場です。これまでは選択肢も限られていましたが、そこに我々も加わることで、徐々に市場を拡げていければと思います。
ーー BYDは中国はもちろん、欧州など海外市場では複数のトラックをラインアップしています。日本ではまずT35の1車種となりますが、今後はラインアップを拡充していくのですか。
石井 可能性はありますが、まずはこの入口のところをきちんとやっていく。
それは商品だけじゃなくて、アフターセールスを含めてきちんとできてから広げていくということです。顧客のニーズを聞きながら進めていきます。本当に顧客が求めているのは何か。バスもそうですが、トラックも結局のところ商品ありきではありません。運送事業者様はA地点からB地点にどうやって、どういうふうに運びたいか。さらに今のお困り事があって、それをどう解決していくか。
EVトラックは、そのソリューションの一つだと思っています。結果的にそれがT35よりも大きいEVトラックなのであれば、導入していくというスタンスです。
<欧州で販売しているGVW20トンのETH8。BYDは海外市場では小型から大型までEVトラックをラインアップしている>

BYDの日本への強い想いで誕生したT35
ーー T35は平ボディ仕様で全長4690×全幅1695mmとコンパクトなサイズです。日本の規格に合わせて作ったのですか?
石井 その通りです。日本市場のために作った車です。
今回のジャパンモビリティショーのBYDブースには、中国から非常に多くのメディアが来ました。なぜならば、T35という日本の規格に合わせたセグメントのトラックを世界で初めて披露したので、とても気になって見に来たというわけです。
<ジャパンモビリティショー2025の会場内でも多くの注目を集めた>

ーー 商品化については、日本側の提案で実現したのでしょうか?
石井 いえ、日本側からの要望と中国の本社側の想いの両方ですね。日本の中で、今現実にEVトラックが入っているのはそのセグメントだよと。だからそこから入った方が、お客様に対して説明もしやすいだろうということは、本社にも伝えました。
一方でBYDは、会社そのものが日本に対して特別な思いを持っているんですよ。
創業者の王伝福がバッテリー会社としてBYDを作った時、日本の携帯会社が顧客でした。また日本のバッテリーメーカーを参考にしたということで、非常に日本に対してリスペクトがあるんですね。だから自動車の世界でも、日本で成功したい。日本で成功すれば自信になります。そこで日本向けのクルマを作ろうと。本当に日本に対する、この会社の想いがあってということですね。
ーー T35は、日中双方の想いが合致して、誕生したというわけですね。
EVバスの信頼性の高さに運送事業者も期待
ーー 他社のEVトラックと比較して、T35の強みはどこですか?
石井 レンジとお求めやすい価格。この2つを強いメッセージとしています。
もちろん、乗用車のようにOTA(Over The Air)でソフトウェアのアップデートができるといった特徴もありますが、やはりプロにお使いいただくためには、レンジとコストがディーゼルに近いというところをアピールしていきたいと思ってます。
ーー 航続距離250km、架装費込みで800万円前後というのは、かなり競争力がありますね。ターゲットはどのような事業者を考えていますか?
石井 まずは、カーボンニュートラルの実現に注力している物流事業者様です。T35は積載量としては約1トンくらいなので、ラストワンマイルに向いています。したがって、宅配事業者さん等に提案していきたいと思っています。ま
ーー 既に提案も始めているんですか。
石井 はい、すでに数社とは、お話を進めさせていたもらってます。
ーー 反応はいかがでしたか。
石井 とてもいいですね。車そのものに対してもそうですが、将来に対する期待も感じます。
BYDはバッテリーメーカーであり、自動車メーカーでもある。乗用車を含めてたくさん作っているので、コストを下げやすい会社だよねとのご理解をいただいています。
ーー バッテリーメーカーでもあるから、製品の質を落とさずにコストを下げられるのは他の自動車メーカーにはない強みですね。
石井 それに加えて、これまで10年間のEVバスの実績から、買った後も安心だよね、という感じで非常にいい形でお話をさせてもらっています。
ーー トラックは初めてだけれど、EVバスは10年の蓄積があり、日本のEVバスの7割強という圧倒的なシェアを占めている。これは事業者にとって安心です。
石井 はい、ものすごく効いています。事業者様から見ると、外資メーカーでもあり、ディーゼルと違ったものが入ってくるので、特にアフターセールスへの不安は大きいと思います。したがって、EVバスでその対応をこの10年間きちんとやってきたというのは、我々の武器ですし、事業者様も実績が出てるので安心いただいています。
今年は大阪万博がありましたが、関西の大手電鉄系のバス会社6社様にEVバスを33台ご購入いただきました。そのEVバスが万博の期間中、本当にトラブルなく走ったので、お客様は喜んでおられるし、我々の社員にとっても非常に自信になりました。
運送会社からは、その会社が作るトラックということで期待の高さを感じています。
<大阪・関西万博会場への輸送に使用されたBYDのEVバス「K8 2.0」(出典:関西エアポート ホームページ)>

運行を止めないサービス体制が何より重要
ーー 販売体制については、どのように計画していますか?
当面は我々がきちんとお客様のフィードバックを聞ける状況にしたいので、我々が直接販売していきます。
というと、販売店を直接経営するというイメージになりますが、そうではなくて、我々の社員が直接事業者に販売する形ですね。
ーー 店舗を構えるのではなく、直納する形ですね。サービスについてはいかがでしょう。
石井 サービス拠点については、他の企業様と連携しながら、事業者様がお使いになるところにサービス工場を構えていく予定です。その上でEV固有の整備については、BYDのスタッフがサポートしていく形ですね。
バスもトラックも、商用車はとにかく止めてはいけません。止めないためのメンテナンスと、止まった時にどう対応するのか、ということがすごく大切になります。したがって、良質なトラックを作れることは、事業者様にもご理解いただけても、それを本当にきちんと整備できるのか、非常に気にされています。
そこで、我々はこういった形でやりますよ、ご安心ください。と伝えています。事業者様からもEVバス10年の実績を見て、それならば信頼できるなと。今はそのような感じでしょうか。
ーー いよいよこれから日本のトラック市場参入となるわけですが、本国からの期待も大きそうですね。
石井 ものすごく期待は大きいですし、成功させなくてはいけないというプレッシャーもあります。
それでも、むしろ楽しみの方が多いです。特に社員はみな若く、経験の浅い者もおりますが、日本の商用車メーカーではできないようなことを、若手でも任されているので、みんなワクワクしていますし、それを見てるだけでも一緒にやってみようじゃないかという気がでてきます。
ーー BYDは若い会社だけに、スピード感と活気、勢いがある。そこが成長の原動力になっている気がします。
石井 これから大いに化ける可能性はあるなと思います。今回ジャパンモビリティショーに初めて出展しましたが、日本の会社だったら、担当レベルの若い社員が、責任者として仕事を回しています。それだけ本当に若い社員は喜んでやっていますし、伸びると思います。
ーー 最後に読者にメッセージを。
石井 我々BYDは、日本の事業者様のための解決策を提供するというスタンスで取り組んでいます。これからも、ぜひ、様々な場で様々なお声を聞かせていただき、我々がお手伝いできることがあれば、本当に頑張ってやっていきますので、安心してお任せください。よろしくお願いいたします。
(取材・執筆 鞍智誉章)
■プロフィール
石井澄人(いしい すみと):1964年生まれ
トヨタ自動車を経て、1996年ゼネラルモーターズに入社、2010年ゼネラルモーターズ・ジャパン社長、2016年ゼネラルモーターズ・ベトナム社長、2017年ゼネラルモーターズ・東南アジア副社長、2018年三菱ふそうトラック・バス 東海・北陸ふそう社長を歴任、2025年1月にビーワイディージャパン 執行役員 副社長に就任
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