公正取引委員会は12月12日、センコーに対して調査を行ってきたところ、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に規定する「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」に掲げる行為に該当し、法に違反する事実が認められたため、センコーに対して勧告を行った。
無償の荷積み・荷卸しといった荷役作業、その他運送に付帯する業務、長時間の荷待ちが、不当な経済上の利益の提供に当たると認められたもの。「無償の荷役作業・長時間の荷待ち」を理由に公正取引委員会が勧告を行うのは、初めて。
<違反事実の概要>

センコーは、資本金の額が3億円以下の法人たる事業者に対し、業として荷主から請け負う貨物の運送を委託している。しかし、2022年12月から2025年11月までの間、下請事業者に対し、自社が管理する施設内において、自己のために無償で荷積み及び荷卸し(荷役作業)、その他運送に附帯する業務(附帯業務)を行わせることにより、下請事業者17名の利益を不当に害していた。
また、2022年12月から2024年3月までの間、センコーが貨物の荷積み又は荷卸しの準備を終えていなかったなど自社の都合により、下請事業者に対し、自社が管理する施設内において、自己のために無償で貨物の受渡しのための待機(荷待ち)を長時間行わせることにより、下請事業者19名の利益を不当に害していたことが認定された。
公正取引委員会は、「無償で荷役作業、附帯業務及び長時間の荷待ちを行わせたことによる費用に相当する額を公正取引委員会の確認を得た上で速やかに支払うこと」「下請事業者に対し、2022年12月1日から2025年12月12日までの間、自社が管理する施設内において、無償で、荷役作業、附帯業務又は長時間の荷待ちをさせた事実の有無について調査し、該当する事実の存在が認められた場合には、下請事業者の利益を保護するために必要な措置を講じること」などを勧告した。
<塩総務管理官>

近畿中国四国事務所の塩友樹総務管理官は、「今回、長時間の荷待ちについては、2時間を超えるものを対象に調査をした。頻度は確認できていないが、長時間の荷待ちが恒常的にあったことを認定した。また、荷役作業・付帯業務についても、認定した。無償の荷役作業・長時間の荷待ちについては、これまで、国土交通省が、物流効率化法に基づき4件の勧告を行っているが、公正取引委員会が下請法に基づいて勧告するのは、はじめてとなる」と述べた。
また、「現在の下請法は、発荷主が運送事業者に物品の運送委託をする行為は、規制対象外であり、運送事業者が運送事業者に再委託する行為のみが対象となっている。しかし、来年1月1日から施行される改正下請法(取適法)は、運送業務の委託取引について、適用範囲が広がっている。川上にある、発荷主と運送事業者に対する運送委託も規制対象となる。発荷主が元請運送事業者に対して、不当な支配性に該当する行為をしている可能性があるため、網を広げている。来年1月以降は、仮に、今回と同じ行為を荷主事業者が行っていたとすれば、取適法の違反行為となるため、荷主も取適法の責任を問われる。今回のセンコーへの事例は、荷主事業者への改正下請法の啓発になると考えている」と語った。
また、取適法により事業所管省庁に指導・助言権限が付与され、すでに国土交通省トラック・物流Gメンとの合同荷主パトロールを行っていることについて、「今後、国土交通省のトラック・物流Gメンが、今回の同じような事例に接して、情報提供者から、仮に公正取引委員会に情報提供することについて、了承が得られたケースにおいては、公正取引委員会と事業所管官庁との情報提供の仕組みが整備されたので、その情報を基に公正取引委員会が調査を開始する可能性はある」と述べた。
■勧告の詳細
センコー/取引先の約1000社対象「無償の荷役作業・長時間の荷待ち」を全国調査