トラック最前線/注目のEVトラック、ZOモーターズ「ZM6」試乗インプレッション

2025年02月21日 14:04 / トラック最前線

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新エネルギー商用車のファブレスメーカーとして2023年7月に設立されたZO MOTORS(ゾウモーターズ)。その第1弾モデルとして昨年登場したのが小型EVトラック「ZM6」だ。今回はこのZM6に試乗、その高い実力の一端を体感することができた。(取材日:2025年2月10日)

EVトラック普及を加速させる「ZM6」

国内貨物運送の約8割を占めているのがトラック輸送だが、それだけにそのCO2排出量も多く、国内全体の約7%を占めるといわれている。政府は2050年カーボンニュートラル実現を目標に掲げているが、そのためにはCO2排出量の少ないトラックへの転換は不可欠といえるだろう。

そこで将来の小型トラックの本命として期待されているのがEVだ。既に三菱ふそうやいすゞ、日野など国内トラックメーカー各社から登場しているが、これに続いてEV専業メーカーも相次いで登場。ZOモータ-ズもその一つである。

そのZOモーターズが、初モデルとして2024年3月に発売したのがGVW(車両総重量)6トン、最大積載量2.9トンの「ZM6」である。価格は1390万円。ほぼ同等の容量となる81kWhバッテリーを搭載する三菱ふそうのeキャンターは約2000万円だから、かなりの低価格だ。EVトラック普及の課題の一つは導入コストの高さだが、ZM6はこの敷居を下げてくれる。

<ZOモーターズ・ZM6>
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ボディサイズは全長5960×全幅1960×全高2210mmで、ホイールベースは3360mm、床面地上高は780mm。従来トラックでいうと、ワイドキャブのロング・超低床に相当するサイズになる。

バッテリーは81.14kWhのCATL製リン酸鉄リチウムイオン(LFP)を搭載。駆動用モーターは最大出力115kW、最大トルク300Nmで、航続距離は180km(WLTPモード)。普通充電と急速充電に対応しており、充電時間は6kWの普通充電で約8時間、80kWの急速充電で約40分。状況に合わせて普通充電と急速充電を使い分けることで、柔軟な運用が可能だ。

<充電ポートはキャビンの後部、運転席側に配置。普通充電と急速充電に対応している>
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また、電動PTOを採用しているので、ディーゼルトラックと同様に幅広い架装が可能なのも導入しやすいポイント。今回試乗したのはドライバンだったが、それ以外にも冷凍バンや塵芥車、ダンプ、キャリアカー、クレーン付きトラックなどに活用することもできる。

なお、ZM6は中国の大手トラックメーカーの欧州向け小型EVトラックをベースにしており、生産も中国で行われている。

快適で使いやすいキャビン内

試乗した印象を一言でいうと、基本に忠実な扱いやすい実用トラックだ。導入しやすい車両価格だけでなく、実力の高さでも満足できる仕上がりである。ディーゼルトラックから乗り換えても違和感が少ないので、EVトラックの運転は初めてというドライバーにも最適だ。

<広く開放感のあるキャビン内>
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インパネ周りの操作系はシンプルで、ボタン類の配置などもディーゼルトラックと大きく変わらず、わかりやすい。キャビン内のスペースは、もともとゆとりがあるが、ステアリングにはチルトとテレスコが装備され、またシフトはダイヤル式でコンパクトにまとめられているので膝周りのスペースがより広く感じられる。頭上には書類入れも装備されているので、荷物をスッキリと収納することも可能だ。

<シフト操作はダイヤル式を採用>
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シートはやや大きめで、座り心地も良い。ホールド感も適度にあるので、快適に運転することができるだろう。一日中座っていても疲れにくいシートである。大きく開口するドア、握りやすい大型のグリップなど、細かな配慮もなされており、乗り降りもしやすい。

<シートは厚みがあり、座り心地が良い>
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ZM6には、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報など、各種の安全装備が装備されているが、パーキングブレーキは電動ではなく、サイドレバーを装備する。マニュアル式のエアコンなども含め、新旧入り混じっているのも特徴といえるだろう。EVトラックというと最新装備満載のイメージだが、基本的な操作系や装備類は従来トラックと同じなので、運転中に迷うことはない。これも導入しやすいポイントの一つだ。

力強い加速と安定した挙動、自然な減速感でストレスのない走り

エンジン車同様、キーを捻ってシステムを起動。ダイヤル式シフトを「D」に回して発進する。

発進時から加速は非常に軽快だ。スタートと同時に最大トルクを発生するEVならではの力強さで、一気に巡航域まで加速。試乗車はドライバンだったが、空荷ということも手伝って、トラックとは思えないほどの加速感である。アクセルの踏み量に応じてリニアにパワーが出てくるので、低速域でのコントロールもしやすく、ストレスなく運転できる。

<発進から高速域までスムーズな走り>
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一方、減速感は従来のディーゼルトラックに近い印象。トラックに限らずEVの場合、回生ブレーキを強めに効かせる車種が多く、アクセルオフと同時に強めに減速し、慣れないとギクシャクした動きになりがちだ。三菱ふそうのeキャンターなどでは回生ブレーキが4段階で切替でき、強めに設定すればアクセルペダルだけで加減速をコントロールできるワンペダルライクな運転も可能なほどだ。ただ、それだけに運転には少し慣れが必要になる。

ZM6では回生ブレーキのレベル切替はなし。回生の強さもあまり強くなく、アクセルペダルを離した時の減速感、ブレーキペダルを踏んだ時の減速感とも自然で、ディーゼルトラックに近い感覚である。このため、ディーゼルトラックから乗り換えても違和感がない。ブレーキに余計な神経を使わずに運転できるのは大きな利点といえるだろう。

<タイトなコーナーでも安定した挙動をみせる>
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今回はカート用サーキットでの試乗だったため、トラックを走らせるにはややきついコーナーもあったが、そこでの挙動も安定しており、リヤが暴れるような悪癖もなかった。EVは重たい駆動用バッテリーを車両下部に搭載するが、これが重心高を下げることになり、安定した挙動にもつながっているようだ。通常ディーゼルトラックではふらつくような、タイトコーナーが連続する場面でもスムーズに走ることができた。

乗り心地も良好。エンジンがないため、EVはもともと静粛性が高く振動も少ないが、それに加えてゆったりとしたシートやしなやかな足回りも手伝って、極めて快適だ。試乗コースには途中、荒れた砂利道もあったが、そこでも乗り心地が損なわれることはなかった。

走り自体は満足できるZM6だが、気になるのは、やはりボディサイズだ。小型EVトラックは都市部で宅配などに使われることが多いが、全幅1960mmのワイドキャブサイズは狭い道でも扱いやすいとは言い難い。

この点はZOモーターズでも認識しており、2トン積で標準キャブサイズの「ZM5」を25年12月に導入予定だ。日本の道路環境により最適なZM5の登場で、活躍するシーンがより広がることは間違いないだろう。ZM5の詳細はまだ不明だが、ZM6の仕上がりを見る限り、充実した新モデルとなることが期待できそうである。(鞍智誉章)

ZO MOTORS/eMotion Fleetと提携、中小事業者のEVトラック導入を支援

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