トラック最前線/最新プレミアムトラックの実力を体感、スカニア「SUPER」試乗
2025年05月02日 13:32 / トラック最前線
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日本でも人気の高いスカニア。その最新モデルとなるのが新型「スカニアSUPER」だ。新開発パワートレーンを搭載するなど注目度も高い。今回、機会を得て短時間ながらコースで試乗。プレミアムトラックならではの高い実力の一端を体感することができた。
スカニア成長の原動力となる新型「SUPER」
物流の2024年問題への対応策の一つとして、トラックの大型化が進んでいる。ドライバーが不足する中で、輸送する荷物の量が変わらないとすれば、効率を向上させることで輸送力を維持するしかない。そのような背景もあって、日本市場で着実に台数を伸ばしているのがスカニアの大型トラックだ。
ちなみにスカニアジャパンの2024年のトラック登録台数は、前年より71台増の467台。2015年の年間登録台数はわずか46台だったというから、この10年間で10倍も台数が伸びたということになる。特にトラクタのセグメントでは強みを発揮し、2024年は367台を登録し、国内シェアは4.92%を占めるまでになっている。
同社のアラン・スーダン社長も「2024年は素晴らしい業績を達成することができた」と振り返るが、その勢いは止まらない。2024年現在、日本国内で稼働しているスカニアのトラックは3024台だが、それを2028年には6000台以上に引き上げるという高い目標を掲げている。
これを実現するために、同社では販売拠点やサービスディーラーを増強、さらに在庫車確保による納車までのリードタイム短縮、レンタルトラックサービスなどの施策も開始する。販売拠点は現在の19カ所から35カ所に、現在44カ所のサービス拠点は75カ所に拡大する予定というから、非常に意欲的だ。
そして、この目標達成に向けての核となるのが、今回試乗した新型「スカニアSUPER」というわけだ。逆にいえば、新型「SUPER」の高い商品力があるからこそ、この高い目標を掲げることができるともいえるだろう。
上質で居心地の良いキャビン
2023年11月に国内販売を開始した新型SUPERは、新開発パワートレーンを搭載し、クラストップレベルの燃費性能を実現したのが大きな特徴だ。この新型パワートレーンは、5年の歳月と総額20億ユーロ(日本円で約3140億円)を超える研究開発費を投じて開発されたものであり、スカニアが持つ最新技術の結晶ともいえる存在である。
この「SUPER」には多くのバリエーションが用意されているが、今回試乗したのはトラクター4×2「420R」。
キャブタイプは長距離向けのR。ハイルーフなので、キャビン内は高さも幅も余裕がたっぷり。広々として開放感があり、居心地の良い空間となっている。
さらに、大きく座り心地の良い本革シート、整然と並び視認性にも優れたディスプレイ、確認しやすいミラーなどオプション類も含めてを装備が充実しているのも魅力。機能性はもちろん、質感も優れており、快適に過ごすことができる。
運転席周りは黒基調、室内空間は白基調でまとめられており、広さと機能感を巧みに演出、さらに運転席周りは随所に赤の差し色が施されており、スポーティな印象も与えている。キャブ内に入った瞬間、プレミアムな空間であることを感じさせる雰囲気だ。
インパネ周りの操作系は整然としており、膝回りもすっきりとしている。シフトのセレクターはステアリングコラムのシフトレバータイプとし、パーキングブレーキは電動式でスイッチはインパネ中央に配置しているため、ドライバーの左横にはレバーなどがなく、窮屈さがまったくない。これもリラックスして運転できるポイントといえるだろう。
<レバーやボタン類が整然と配置されたステアリング周り。赤のステッチがスポーティな雰囲気を感じさせる>
ディスプレイは2カ所に配置。ドライバー前面のディスプレイには速度や燃料等の各種メーターが表示され、インパネ中央の10.1インチディスプレイには空調や車内照明、後方カメラ映像、各種車両情報が表示される。表示される文字や情報は大きくはっきりとしているので、視認しやすい。タッチパネル式なので直感的に操作できるのに加えて、一部機能は物理ボタンでも操作可能とするなど、ドライバーの好みや状況に合わせて操作できるので使いやすい。
<インパネ中央に配置するセンターディスプレイ。画面が大きく表示も見やすい>
日本の環境に最適なパワートレーンと足回り
今回の試乗会場は、千葉県にあるポルシェエクスペリエンスセンター東京のサーキット。ちょっと意外な組み合わせだが、ポルシェもスカニアも同じフォルクスワーゲングループということで、試乗会場に選ばれたという。そのサーキットは、高低差が大きく、ドイツ・ニュルブルクリンクのカルーセル、アメリカ・ラグナセカのコークスクリューなど有名コーナーを再現しているのが特徴だ。
ただ、本来はポルシェを気持ちよく走らせるために作られたサーキットだから、タイトコーナーや急勾配が連続し、大型トラックにはちょっと意地悪な試乗コースといえる。しかし、それだけにクルマの素性がよく見えてくる。
エンジンを始動して、いざスタート。まず驚くのは、キャビン内の静寂さと振動の少なさだ。外で聞くとエンジン音はそれなりに大きいのだが、それがキャビン内に入ると、ぴたりと聞こえなくなる。そして振動も巧みに抑えられており、目線の高さを除けば、ディーゼルトラックに乗っていることを忘れてしまうほど。上質な乗用車に乗っているような感覚だ。
搭載するエンジンは新開発の直6・13リッターのDC13。このエンジンには最高出力420馬力・460馬力・560馬力の3つのバリエーションがあるが、今回試乗したのは420馬力のタイプ。DC13の中では、もっともベーシックな仕様になるが、それでも最大トルクは2300Nmを発揮するハイパワーエンジンである。
<SUPERが搭載する直6・13リッターのDC13エンジン。高出力と低燃費を実現する最新エンジンである>
このエンジンの特徴は、900rpmという低回転域から最大トルクを発生すること。さらに従来よりギア比を約60%拡大したATと組み合わせている。そのおかげで、発進が非常にスムーズだ。また低速での走行時もまったくギクシャクすることがない。アクセルへの反応も穏やかなので、余計な気を使う必要もなく運転に集中することができる。ブレーキの感覚も同様で、踏み量に応じて強さを増すタイプなので、ここでもストレスを感じさせない。
試乗車の足回りは前リーフ、後エア。乗り心地はしなやかで、極めて上質。ここも上級の乗用車に近いイメージだ。今回はヘッドのみで試乗したため、牽引時よりソフトなのは確かだが、これなら荒れた路面でも快適に過ごせるだろう。
そして特筆できるのは、ステアリング操作に対する正確なレスポンスだ。ふわりとしたソフトな乗り心地からは想像できないほど無駄な動きは抑えた足回りで、タイトなコーナーなどでも不安なく運転できる。狭い箇所も多い日本の道路環境にもよくマッチした足回りだ。
運送事業者の課題を解決する「SUPER」
積極的な目標を掲げるスカニアだが、その大きな武器となるのがプレミアム性である。
スカニアといえば、多くの大型トラックドライバーが「一度は乗ってみたい」という、まさに憧れの存在といえるだろう。実際にスカニアに乗るドライバーに聞くと、休憩施設などで国産トラックに乗る他のドライバーから声を掛けられることが多いという。乗りたいと思って乗れるクルマではないから、余計に気になる存在なのだ。
トラック運送業界の大きな課題がドライバー不足だ。多くの運送事業者が、いかにしてドライバーを採用するか頭を悩ませている。募集しても応募者が思うように集まらないのが実情である。
そこで優位に立つのがスカニアというわけである。スカニア車を運行する運送事業者には、ドライバーが集まり、そしてまた、ドライバーの満足度も高いから定着率も高い。
ドライバーにとって、会社選びはトラック選びでもある。同じ仕事をするなら、快適なトラックに乗れる会社の方がいい。1日の大半を車内で過ごす長距離ドライバーであればなおのことである。そして「SUPER」は、その期待を裏切らないプレミアムトラックだ。今回の試乗で、そのことを実感した。
確かにスカニア車の導入費用は、国産トラックに比べて約1.5倍高い。しかし「SUPER」は燃費が良く、故障も少ないことで、長期的なトータルコストでは同程度になり、決して高くはないという。その上でドライバー確保の点でも優位になるというのだから、導入を検討する運送事業者が増えるのも当然である。「SUPER」は、今後ますます国内市場で存在感を増すことになりそうだ。(鞍智誉章)
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