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2025年07月03日 14:28 / 経営
国土交通省は6月17日、トラック運送業における多重下請構造検討会で実施した「過去の配送実績データを活用した荷主間提携の効果検証事業」の結果を公表した。同日発表した「トラック運送業における多重下請構造検討会 とりまとめ」の中に掲載した。
今回、共通のプラットフォームで業種が異なる(=輸送需要の波動が異なる)複数荷主の運行を組み合わせ、複数運送事業者のリソースと全体最適の観点からマッチングを行ったと仮定。その場合の効率化メリットについて、過去の配送実績データをもとに定量的に算出する試みを、国交省において実施した。
荷主6者から6カ月分の運送実績データを収集し、欠損値等について補完をしたうえで、効率よく運べるように個社の中で運送を組み直した場合と、6者横断で運行を組み合わせた場合を比較し、必要なトラックの延台数やトラックの稼働率、実車率等の観点から、複数荷主の荷物を積み合わせることによる効果を検証した。なお、データ数をなるべく多く確保するため、今回は関東地方における地場の運送を分析の対象とした。また、配車表の自動化の効果を定量的に把握するため経営指標(コスト削減・改善余地)を示す指標を定めた。
実験の結果、個社ごとに運送計画を組み直した場合と比べて、6者の荷主間で運送を組み合わせた場合は、必要なトラックの延べ台数約13~14%の削減が期待できることが分かった。また、削減できたトラックの延べ台数を1台あたり約7万7000円として運賃に換算すると、6者合計で、閑散期で7億円、繁忙期で約9億円を削減可能との試算結果が出た。
12時間当たりの運行数は、組合せ前は大半の荷主が1~1.5運行であったところ、組合せ後は平均して2.6運行へと改善がみられた。一方で、稼働率(トラックが動いている時間/出庫から帰庫までの時間)や、実車率(貨物を載せて走っている時間/トラックが動いている時間)については、組合せ前と後で、荷主によって値が改善する場合もあれば低下する場合もあった。
各荷主の運送実績データをまとめると、トラックの出発時刻は6時台と14時台、到着時刻は7時台と15時台に集中しており、それぞれピークタイムがあることが分かった。そのため、出発地・到着地の集中時間が待ち時間を伸長させていることが伺えた。
実証実験の結果、複数荷主の運送を組み合わせることで必要なトラック台数の総量が削減されるということは、トラック運送事業者にとってはより少ないドライバーで効率的に運送でき、削減できた分のドライバーが他の荷主の貨物を運送することで、総収入も増えるというメリットがある。また、荷主にとっても支払う運賃の総額を抑えられるというメリットがあることが判明した。
稼働率や実車率について、荷主によっては組合せの効果があまり得られなかったことの一因として、各荷主から提供された配送実績のデータの精度が高くなかったことが挙げられる。例えば、実際は10時~11時に行われた運送であっても、配送実績のデータ上で「午前中に配送」という情報しか書かれていないと、他の運送と組み合わせることが難しくなってしまう。このため、複数荷主間における運送の組合せを効率的に行うためには、まず、荷主側において、運送計画の詳細なデータを整備することが重要となる。
トラックの出発時刻・到着時刻にピークタイムがあると、物流センター等で待機時間が発生してしまうことや、ピークタイム以外の時間における組合せがしづらくなるというデメリットがある。そのため、特に大規模な荷主においては、数時間だけでも貨物の出荷・受取り時間をずらすオフピーク化を行うことによって、運送の組合せの効果をさらに高めることが期待できる。また、トラック運送事業者側から「この時間帯であれば組合せがしやすい」といった時間の提案を行うことも考えられる。
今回の実験から、限られたドライバーで効率的に貨物を運送するためには、荷主側における運送計画・運送実績データの整備が重要であることが分かった。これまでは、元請事業者に運送を丸投げして、自らの貨物がどのように運送が行われたかを知らないという荷主も多かったが、効率的な運送が自らの運送コストの削減にもつながることを認識し、輸送の効率化を主体的に推進していくことが求められる。
■トラック運送業における多重下請構造検討会 とりまとめ(21~24頁)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001898301.pdf