トラック最前線/UDトラックス クオンGW6×4新型トラクター試乗 走りが快適なドライバーに優しい最新トラクター
2023年04月28日 16:34 / トラック最前線
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UDトラックスから、4月に発表・発売された「クオンGW 6×4新型トラクター」。同社のフラッグシップとして13年ぶりに復活したこの新型トラクターには、同社が誇る最新テクノロジーが満載され、ドライバーに優しいトラクターに仕上げられているという。そこで今回は、日本自動車研究所城里テストセンターで行われた試乗会で、短時間ながら高い実力を体感。物流業界のドライバー不足という問題と、それが要因となる事故や疲労の軽減への貢献という観点からも、大いに期待できる新型トラクターだ。
多くのユーザーから支持されていたUDトラックスの大型トラクター「クオンGW」。だが、13年前に同社がボルボ傘下になった際、このカテゴリーはボルボFHに集約されることになり、一度は姿を消した。しかし、その復活を望む声は根強く、21年にボルボ傘下を離れたこともあって、待望の再登場となったのが、この新型クオンGW 6×4というわけである。
その特徴は、ドライバーにも荷物にも優しいトラックであること。背景としては物流業界の慢性的な人手不足。特にドライバー不足は深刻だ。重量物を運ぶ大型トラックの場合、体力的にもドライバーにかかる負担は大きい。そのストレスや疲労を軽減できれば、少しでも人材確保につながるし、安全にもつながる。
そこで新型クオンGWでは、大出力による快適な走りと強力なブレーキ性能、UDアクティブステアリングによる操作のしやすさなど、充実した機能を搭載。ドライバーに優しいトラクターに仕上げたとしている。
修正舵不要、坂道もスムーズ
「クオンGW 6×4」が搭載するエンジンは、直列6気筒13リッターの新型「GH13」。最高出力470ps、490psの仕様も設定されているが、今回試乗したのはラインアップ中で最大のパワーを誇る最高出力530ps仕様。最大トルクは2601Nmという圧倒的な力強さを誇り、重量物輸送にも余裕をもって対応することが可能だ。またトランスミッションは、GH13エンジン専用にチューニングされた12段電子制御式AMTの「ESCOT-7」を搭載。この組み合わせによりスムーズな加速と優れた燃費性能を両立しているという。
<搭載されたGH13エンジンとESCOT-7>

まずトラクター単体で、荒れた未舗装路を試乗。大きな凸凹がある波状路を通って傾斜を上り降りするコースが設定されており、距離こそ短いものの、実力差が出やすいコースとなっていた。
スタート直後、まず波状路に入って驚かされたのは、UDアクティブステアリングの効果だ。これは従来の油圧式ステアリングギアボックス上部に電気モーターを搭載し、1秒間に約2000回の頻度でセンサーから運転環境を感知して、走行方向とドライバーの意図を判断、それに合わせてステアリングの動きや重さを制御する運転支援機能である。
大きな凸凹が連続する波状路を走る場合、普通なら路面のうねりに合わせてステアリングが取られてしまい、その修正に追われることになる。しかし、このUDアクティブステアリングであれば路面の凹凸に合わせてステアリングの修正が自動的に行われるので、修正舵は必要なく、平坦な路面をまっすぐ走っているような感覚になる。その制御も極めて自然なので、余計な神経を使うこともないし、操作も違和感がない。既に「クオン」トラックには採用されている機能だが、この新型GW6×4にも標準装備されたのは、不整地を走ることの多いトラクターだけに、嬉しいポイントといえるだろう。
<未舗装路でもスムーズな走り>

続いて荒れた上り坂で、一時停止から再発進。ここで威力を発揮するのは、新型GWに標準設定された、サードデフロックと左右輪デフロックを同時に作動するフルデフロック機能である。デフロックをオフにした状態では急坂でタイヤが空転してしまい、登るのにも一苦労という状態だったが、デフロックをオンにすれば何事もなかったかのようにスルスルと登っていく。フルデフロック機能のオン・オフ切り替えは、運転席右側のスイッチ一つで走行中でもでき、作動状態もメーター正面のディスプレイに表示されるので、操作に迷うこともない。
<荒れた上り坂もラクに走破する>

大出力エンジンと強力なブレーキでストレスのない走り
試乗場所を外周路に移し、今度は20トンの積み荷を積んだトレーラーと連結した状態で、高速域も含めた舗装路面での走りをチェックする。
ここでまず感じたのは、走りのスムーズさ。低回転域から厚いトルクが出てくるのに加え、微妙なアクセルワークにも素早く応答してくれるので、車両の重さをほとんど感じない。13リッターという大排気量エンジンならではの余裕のパワーで、走りに関してストレスを感じることはない。
<パワフルかつスムーズな走り>

またパワーの向上に合わせて、補助ブレーキ(大容量流体式リターダー)を強化するなど制動力も高められており、これもストレスのない走りの実現につながっている。ディスクブレーキを採用していることもあり、長い下り坂が続く状況でも安心だ。運転時の疲労軽減につながるだけでなく、経験の浅いドライバーでも扱いやすいことは、大きなポイントといえるだろう。
また、ここでもUDアクティブステアリングによる、自動補正の正確さを体感することができた。路面のうねりも意識することなく直進できるのはもちろんだが、ステアリングの感覚が乗用車に近く、非常に扱いやすい。低速域では軽く、車速が上がると適度に重くなって高速走行時の直進安定性に寄与するが、特に切り返しをすることが多い大型トラクターの場合、ステアリング操作の軽さは、ドライバー不足に悩む運送業界全体にとっても意義があるといえるだろう。小柄なドライバーや女性ドライバーでも負担が軽減され、安心安全に扱うことが可能だ。
フラッグシップならではの品質感と居住性
高い機能性を持つクオンGWだが、UDトラックスのフラッグシップとなるだけに、居住空間や操作性でも充実した内容を備える。
まずインパネ周りは、機能別に整然とまとめられ、操作しやすく視認性が良いのはもちろんだが、革巻きステアリングホイールやベルトイン高機能シートなど上級装備も採用され、質感の高さも最上級。広々として開放感のあるキャビンそのものも、心地よさにつながっている。
<機能的に配置された運転席>

特にシートの座り心地のよさは別格だ。欧州の長距離トラック用シートで高い評価を得ている、ドイツのイスリングハウ社製のシートが採用されているが、硬さや表皮は日本人ドライバー向けに最適化されており、ゆったりとしながら動きやすいシートとなっている。細かな調整も可能なので、自分の体格や好みに合わせた位置にできるので、最適なセッティングにすることができるのもうれしい。
<機能性に加え質感も非常に高いシート>

全体の乗り味も乗用車に近く、しなやかで心地よい。静粛性の高さも疲労軽減につながっており、長距離の運転もラクにこなすことができるだろう。
「パワフルでありながら省燃費、高い運転性と制動力、そして快適な居住性により、人にも積荷にも優しいトラックが実現した」とUDトラックスが自信を見せる新型クオンGW 6×4トラクターだが、実際に体感してみるとその言葉も納得できる。すべてにおいてトップクラスの実力を誇る優秀なトラクターである。(鞍智誉章)
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