トラック最前線/プロロジス 長距離から中距離へ 新しい働き方に合わせた拠点展開

2023年08月10日 11:14 / トラック最前線

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間近に迫った「2024年問題」への対応に向けて、運送・物流業界全体で様々な取り組みが開始されている。その中で注目されるのが、大手物流不動産のプロロジスの取り組みだ。賃貸用物流施設を手掛ける同社はこれまで、仙台や岩沼に施設を開発し東北エリア全域をカバーできる拠点として入居企業に提供してきた。しかしドライバーの時間外労働時間の上限が960時間に制限されると、1日で配送できるエリアは片道3時間程度の距離に限られ、仙台エリアからでは北東北までカバーできなくなる。そこで同社は北東北への中継拠点としての利用ニーズを見込み、新たに岩手県に「プロロジスパーク盛岡」を11月に開発する。これは運送業界から見ても期待できる取り組みといえるだろう。そこでプロロジスパーク盛岡開発の狙いや特徴、今後の展望について、プロロジスの開発部ディレクター中山博貴氏に話を伺った。
取材:7月7日

片道3時間の距離で北東北をカバー

――  プロロジスさんでは、いよいよ11月にプロロジスパーク盛岡が竣工予定ですが、まず盛岡というエリアを選んだ理由を教えてください。

中山  2024年問題を考慮して、片道3時間圏内で円を描いていくと、既存の施設ではアクセスできないエリアがいくつか出てきます。その一つが北東北です。弊社はこれまで仙台エリアに施設を開発し入居企業様は仙台から東北全域の物流をカバーしてきましたが、そのままでは秋田、青森、岩手への配送ができなくなる。そこで土地の確保も含めてリサーチを進めてきましたが、その結果、高速道路などのアクセスも含めて、中継拠点として盛岡が最も適していると考えました。

――   場所も東北縦貫自動車道の盛岡南ICに近く、盛岡市の中心部にもアクセスしやすい位置にありますね。

中山  3時間圏内で北東北をカバーするには、高速道路を使うアクセスが必須になります。また、盛岡市は北東北で最大の人口集積地ですが、そこから車で30分圏内ということで、市内への配送はもちろん、雇用の面でも北東北で一番優位な立地になるのかなと考えています。

――  北東北では、どのような配送のニーズが多いのでしょうか。

中山  他の地域と同様で多様なんですけども、やはり多いのは常温だけではなくて冷凍冷蔵を含めた食品、飲料日用雑貨などですね。これらは、日常的に配送が必要で、そして絶対に一定地域内にないといけないものです。またその他では、県の南部にメーカーの工場が多いので、その倉庫としてのお問い合わせも意外と多いです。

――  今まで大型物流施設がなかったエリアということで、新しいお客様も増えそうですね。

中山  実際にその通りで、現在は小中規模の施設を分散して借りて対応するという傾向が見られます。物件がないので仕方なく仙台に岩手県の物をストックしていたりするケースもありますので、その受け皿にもなれるかと考えています。

――  これまでは仙台から東北全域に配送していましたが、それでは北東北への配送は長距離になる。盛岡からなら片道3時間圏内ですから、ドライバーの負担や人材確保という点でも期待できそうですね。

中山  おっしゃる通りで、働き方改革関連法以前に、長距離ドライバーの確保が難しくなっている傾向は数字でも出ています。運送会社さんからのお問い合わせも多いですね。トラックの中継地点として借りられないか?とか。もちろん駐車場だけを貸すことはできないのですが、そういうニーズも多いことは認識しています。

――  長距離輸送では鉄道貨物も注目されていますが、止まってしまう可能性もある。トラックの中継拠点というのは、リスク分散という意味でも期待されます。

中山  昨年、北東北地方は大雨の影響で鉄道貨物が1カ月以上も止まる事態になりました。そのため、弊社のお客さまの中には、採算度外視で仙台エリアからピストン輸送したというケースもあったようです。BCP的な観点で鉄道に依存しすぎるのも良くない、リスク分散が必要と考えている企業が増えていると思います。

<プロロジスパーク盛岡>
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トラックドライバーが安心できる空間を提供

――  施設の特徴を教えてください。

中山 プロロジスパーク盛岡は、敷地面積約2万2000坪、3階建てで延床面積は約3万坪で、最大で1フロア約1万2000坪を確保した大型のマルチテナント型物流施設となります。ワンフロアでの貸付面積は1500坪前後から大型の1万坪規模まで対応できる倉庫で、各階に直接アクセスできる建物構造となっています。東北エリア全体で共通する傾向としてマルチ施設が少なく、特に北東北においてはマルチ施設そのものがない状態で、かつ平面で使える倉庫が少ないですから、期待されている方も非常に多いと感じています。

――  実際に配送されるドライバーにも配慮されているようですね。

中山  敷地が高低2段構造になっているのですが、それぞれに1か所ずつ入口と出口があり、大型トラックでもスムーズに出入りしやすい構造になっています。敷地内は全て一方通行のルールを採って安全を確保し、しっかりと各所にサインを掲示して、目的地までの順路もわかりやすくしています。

――  ベテランドライバーはもちろん、若いドライバーでも安心して行くことが出来そうです。

中山  敷地が広いこともあって、取り回ししやすいことも特徴です。通路幅やスロープ、建物内の車路もしっかり幅を確保していますので、安全性も高いと思います。45フィートのコンテナセミトレーラーでもアクセス可能ですから、公道を走れるトラックであれば、ほぼすべてのトラックが入れます。またウイング車も両サイドがしっかり開けられるように天井高も確保しておりますので、積み込み、荷下ろしともストレスなく作業できます。

――  地域的に冬は雪が積もるかと思いますが、その辺りの対策は?

中山  盛岡は北東北の中では比較的雪が多くないエリアですが、それでもある程度積雪はありますので、それに対する対策を講じております。各階にアクセスするスロープを含め、敷地内の傾斜がある部分には全てロードヒーティングを入れてあります。また、屋根から落雪の危険性もありますので、雨どいにはすべてヒーターを入れて、ツララができず、積もった雪も溶けるよう対策もしています。その他、敷地内に複数台のホイールローダーを購入し、除雪を行う体制を整えております。

――   冬対策も充実しているのですね。リラクゼーションスペースなどはいかがですか。

中山  ドライバーさんが気持ちよく使っていただけるよう、設備も充実します。広い休憩スペースを設け、無人コンビニも併設しますので、リラックスしていただけると思います。配送の途中で食事やトイレなど立ち寄るポイントを決めているトラックドライバーさんも多いと思いますが、そのポイントの一つにしていただけるように整えたつもりです。

――   落ち着いて食事がとれるのはいいですね。

中山  まだ運営の詳細は決まっていないのですが、お昼の時間にお弁当を販売させていただこうと思っています。倉庫全体で働く方の人数も見ながら、できるだけそこは充実させて、お昼をしっかり提供させていただきたいと考えています。さらに実際に稼働し始めると、いろいろなご意見やご要望も出てくると思いますので、ドライバーさんや施設内で働く方の声を聞きながら改善していきたいと考えています。

――   規模が大きいだけでなく、安全に運行しやすく、快適に過ごすための設備も充実した施設となりそうですね。荷主さんからはもちろんですが、ドライバーからも人気を集めそうです。2024年問題への対応は運送会社だけでなく、物流に関連する企業全体で取り組まないといけない問題です。その中でプロロジスさんの取り組みは非常に高く評価されると思います。

中山  個人的には、このプロジェクトをやって、トラックドライバーさんのありがたみというか、この人たちがいないと成り立っていないということを実感しています。これからも、トラックドライバーさんに喜んでいただける施設にしていきたいですね。

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<中山博貴氏プロフィール>
オリックスを経て、2011年プロロジス入社。国内の数多くの物流施設の運営管理、リーシング、新規開発プロジェクト推進等、幅広い業務に従事。2020年より東北エリアの開発を担当し、プロロジス初となる北東北・岩手県での新規プロジェクト「プロロジスパーク盛岡」の開発を主導している。

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