トラック最前線/トップインタビュー・HWE 蕭 偉城CEO
2023年11月27日 13:00 / トラック最前線
多用途商用EV「ELEMO(エレモ)」シリーズを販売しているHW ELECTRO(HWE)は、新たなラインアップとして、新型軽商用EV「PUZZLE」のコンセプトカーを発表した。「ELEMO」とは異なるオリジナルのデザインを採用するなど、同社の新たな提案として、その狙いや取り組みには注目される。そこで蕭 偉城(ショウ・ウェイチェン)代表取締役CEOにPUZZLE開発の背景やHWEの今後の展開について伺った。
取材日:10月26日
スタートから4年目、軌道に乗り始めた商用EV
-- 2021年のELEMO発売以来、好調に推移してこられてきたように見えますが、いかがでしょうか。
蕭:ありがとうございます。もちろん細かいことを言えば問題もございますけれど、大きな流れには乗っているのかなと感じています。
-- 台数面ではどうですか。
蕭:少し改善が必要な部分もありまして、台数自体はまだ目標に届いていません。ただオーダーの台数は予想の範疇には届いていますので、これから改良された車両がどんどん日本に入ってきます。それを随時納車していくというところに来ています。
-- 設立が2019年ですから、その段階まで随分早かったですね。
蕭:今年で創業4年目ですけども、1年目はSDGsという言葉すらなくて、2年目に菅政権になってからSDGsと騒がれ始めたらあっという間に浸透して、そのぐらいの時期にELEMOを発表して、そこからなので本当に変化が早いですよ。
-- 商用EVへの認知が急速に進みました。
蕭:あっという間です。同時に他のEVメーカーさんの参入も続いています。ただ僕としては早くEVが広がることの方が大事。ライバルが来たからどうしようという危機感は正直あまりなくて、もっといいものを、もっとEVを増やそうと思っています。
EVとガソリン車は、やはり全然違うものなんですよ、自動車というカテゴリーは一緒です。でも使い方から提案していかないと、本当の意味での違いがなかなか伝わらないので、そこを僕たちはずっとアピールしてきました。
-- EVが市場に定着し始めて、ようやく理解が深まってきたように感じます。
蕭:そうですね、自動車業界全体がEVに振り始めたので、これで一気にEVの波が広がって、EVの正確な知識が一般ユーザーにも広がると思っています。
ラストワンマイル問題を解決する「PUZZLE」
<ジャパンモビリティショー2023の会場で発表されたPUZZLE>

-- これまでHWEでは軽EVトラック「ELEMO-K」を販売されてきました。今回コンセプトカーを発表した「PUZZLE」も同じく軽規格の商用EVですが、ELEMO-Kとはかなりコンセプトが異なりますね。
蕭:小口配送を考えた場合、今後、軽のEVバンというのが大きなトレンドになっていく。そこで商用EVの軽バンとして「PUZZLE」のプロジェクトをスタートさせました。
ラストワンマイルが大きな問題になっていますが、その問題解決の一つの糸口にできればと思って発表したのが「PUZZLE」というわけです。荷主さんがEVを求めていて、EVを持っている運送事業者に需要が集まるといった傾向も出てきているので、宅配などはこれから急速にEVに変わっていくでしょう。
-- 軽トラックのELEMO-Kではカバーが難しかった?
蕭:お客様の要望で多いのは積載量です。軽トラックでも、おおよそ1立米は欲しいというお客様が多い。ところが、これを箱でやろうとすると高くなってしまう。バンならば価格を上げずにそれが可能なので、価格面でもバンというカテゴリーは必要だと思っています。
-- 発表によると、PUZZLEの予定価格は航続距離1km=1万円としています。発売は2024年末~2025年が目標とのことですから、バッテリー容量などの詳細はこれからということかもしれませんが、軽商用EVバンへのニーズとしてはどのくらいの航続距離が多いと見ていますか。
蕭:今のラインアップでいうと、軽EVのELEMO-Kだと航続距離120km、小型EVトラックのELEMOは200kmです。しかし、ELEMO-Kの120kmはちょっと足りないという意見が多いので、やはり軽でも200kmぐらいは走らせたいですね。
-- 他社の軽商用EVも200km程度としているものが多いですから、このあたりが標準になりそうですね。ところで、ELEMOはアメリカと中国に拠点を置くセントロ社で生産していますが、PUZZLEも同様なのでしょうか。
蕭:どこで生産するかは、まだ決めてないんです。
部品の調達から組み立てまで、すべて自分たちでやる、というのは我々の規模だとできないので、あくまでもデザイン、意匠の権利を自分たちが持って、OEMの製造メーカーを探すというやり方です。
-- 車種に合わせて最適な製造メーカーを選ぶという事ですね。
さて、今秋は大型商用EVバンのELEMO-Lも発売されましたが、今後、軽EVの方はELEMO-Kに代わって、PUZZLEをベースにラインナップを展開されていくのですか。
蕭:ELEMO、ELEMO-K、ELEMO-Lはアップデートを重ねつつ、もちろん今後も継続していきます。バンタイプのPUZZLEはまた別のフェーズになります。
-- 大きく分けると、ELEMOとPUZZLEの2シリーズになるわけですね。その後の展開も予定されているのでしょうか?
蕭:もちろんです。2トントラックぐらいの大きさの車種に需要があると考えています。OEMメーカーさんと協業しながら、どういうふうにやっていくか話し合って、開発していきたいと考えています。
-- 車両の大きさとしては、どの辺りまでがEVとして適切なサイズになるのでしょうか。
蕭:大型トラックは巡航距離や重量などを考えると、EVでは難しいです。テスラが頑張ってやっていますけれども、すべてをEVにする必要はないと思います。大型トラックは水素の方が効率も良く、環境問題を考えても水素の方が向いていると思います。
-- そういう点でも、EVメーカーとして小型商用車にこだわっていくのですね。
蕭:ラストワンマイルの部分を、しっかりカバーしていくというのが我々のスタンスです。大型車の領域は、それを得意とする企業にやっていただいて、EVメーカーである我々は、EVに最適な小型車の領域をしっかりカバーしていきます。
職種に合わせて最適化できるEVプラットフォームが強み
-- EV商用車市場は今後拡大していくことが予想されますが、その中でHWEの強みはどこにあると考えていますか。
蕭:我々の強みは職種、業種に合わせて最適化できるEVプラットフォームを持っていることだと思います。
多くの自動車メーカーでは、メーカーが作ったプラットフォームにお客様側が合わせる形です。しかし我々の場合は、お客様のニーズに合わせてIT企業と連携し、業種や職種に合わせてプラットフォームを充実させていくという考え方なんです。
例えば、美容師をやりたい方が我々の車を買い、移動店舗を始めたとして仮定してください。そうすると汎用の車なのに、予約機能が初めから付いている。我々のプラットフォームは、美容師のアイコンを押すと美容室になる。こういった世界観を僕たちは作っていきたい。これは他社とはかなり異なるアプローチだと思うんです。
車を買ったらすぐ開業できる、そういった世界観を今後作っていきたいと思っています。それは他社だとなかなか厳しいのではないでしょうか。
<車両とインターネットをつなぎ、災害支援や配送領域の最適化を始めとする様々なサービスの実現が可能になるHW ELECTRO Platform Service>

-- ソフトウェアで機能を広げていくというのは、2024年問題への対応という点でも期待できますね。
蕭:物流はもっとDX化を進めて、2024年問題に対応していく必要があります。
例えば、僕たちが今やっているのは、ドライバーのバイタルチェック機能と車を連動させて、眠くなったら車を強制的に道路端に寄せるといったものをやっています。そういうところをソフトウェアでバックアップしていきたい。
-- そのような機能は、自動車メーカーじゃないとできない部分ですね。
蕭:じゃないとできないです。
物流の課題解決のために、自動車メーカーとして出来ることは何か。今後も取り組んでいきますので、ぜひ期待してください。
(取材・文 鞍智誉章)
■蕭 偉城(ショウ・ウェイチェン)氏
1984年台湾生まれ、1986年に来日。千葉県出身。
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