取適法/運送委託契約「運送業務、その他一切の付帯業務」の記載は違反行為のおそれ

2025年12月25日 14:38 / 経営

公正取引委員会は12月23日、運送業務委託契約において、委託する業務内容を「運送業務、その他一切の付帯業務」と記載して、運送業務以外の長時間の荷待ち、積込み・積卸しといった業務を受託事業者に行わせる行為は、中小受託取引適正化法(取適法)において、違反行為となるとの見解を示した。

<公正取引委員会>
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同日発表した「運送事業者間の取引における下請法違反被疑事件の集中調査の結果」において、主な違反行為の一つである業務委託の際の「書面の不交付・記載不備」についての具体的事例紹介と公正取引委員会、中小企業庁の対応についての説明で、企業取引課の武田雅弘執行連携担当企画官が明らかにした。

武田企画官は、「書面の不交付・記載不備については、発注書面に運送業務以外の荷待ちや積込み、取卸しといった運送業務以外の作業を書いていない事業者に対しては、荷待ちや積込み、取卸しなどの作業を行わせるならば、それを明記するように指導した。また、運送業界では『運送業務、その他一切の付帯業務』という表現を記載している事業者がいる。この事業者に対しては、運送業務以外の役務の内容、その他一切の付帯業務が、具体的に何なのか、明確にするように指導した。つまり、運送業務と関連する業務全部という発注の仕方は、取適法では違反になることを明示的に指導した」と述べた。

その上で、「取引の適正化の観点からは、運送業務以外の役務の内容を詳しく書面に書かなければ違法であるという運用を取適法でも徹底する」と語った。

また、「コスト上昇局面において、受託側の運送事業者と協議を行うことなく代金を据え置いた」「受託側の運送事業者が代金の引上げを求めたにもかかわらず、理由を書面等で回答することなく、代金を据え置いた」といった、買いたたきについては、武田企画官は、「一方的に代金を決定している。十分な協議を行っていない運送事業者に対して、受託側の運送事業者との価格協議の場を設けること。協議を行う場合には、昨今の労務費などのコスト上昇を考慮して、十分な協議を行って代金を定めるように指導した。取適法では、委託事業者の禁止行為として、協議に応じない一方的な代金決定が追加される。委託事業者は、中心受託事業者からの価格協議に応じない場合、取適法上、問題になり得ることに注意する必要がある」と指摘した。

さらに、「委託内容として発注書面等に記載していないにもかかわらず、運送業務以外の役務(荷待ち、積込み・取卸し等)を無償で行わせていた」「有料道路の利用が必要な運送業務であるにもかかわらず、有料道路の利用料金を受託側の運送事業者に負担させていた」といった、不当な経済上の利益の提供要請について、武田企画官は、「そもそも運送業務以外の役務である作業を運送業務とは区別して、決めて定めること。その対価について、十分な協議を行うように指導した。取引を行う上で、トラブルにならないようにするためには、書面を交付する義務を守ることが大切だ。取適法では、発注内容を明示する義務になるが、これを遵守することが必要不可欠となる。今後も、発注内容を明示する義務をしっかりと発注側事業者が努めていくように、法執行に努めていく」と述べた。

集中調査は、公正取引委員会が取り組む新たな手法のひとつ。業界の商慣習から下請法違反が生じている事例、商慣習とは言えなくとも業界によくある下請法違反について、個別に対処するのではなく、その業種に対して、集中的に調査を行って指導を行い、その事例と指導内容を公表することで、その業界・業種の取引の適正化を進めるための施策となっている。

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