
ノンデスクワーカーに特化した求人サイト「クロスワーク」、物流事業者向けSaaS・プラットフォーム「ロジポケ」を提供しているX Mile(クロスマイル)。物流業界とともに歩む同社だが、今年2月にはセイノーHD・NXグループ・日本郵政キャピタルと資本業務提携を行うなど、さらなる成長を遂げている。そこで今回は同社の野呂寛之代表取締役CEOに、トラック運送業界の現状や課題、同社の取り組みについて伺った。(取材日:2026年3月27日)
会員100万人超、多くのトラックドライバーを支援するクロスワーク
ーー クロスマイルさんはまだ若い会社ですが、スタートしてからどのくらいですか?
野呂 今8期目になりました。設立は2019年ですが、本格的にスタートしたのは2020年くらいからですので、6年ほどですね。
ーー 提供されているサービスは、どのような内容でしょうか。
野呂 我々はノンデスク産業と呼ばせていただいてるんですけれども、トラックドライバーなどの人材紹介を行なっており、「クロスワーク」という会員登録制のサイトを運営しています。会員は今100万人以上ですので、おそらくドライバーへの転職希望者の方と国内で一番面談している会社かなと思っています。
ーー 有料の転職サービスなのですか?
野呂 我々のビジネスは、企業から成果報酬型で企業から求人をいただいて、転職支援をしていくというものです。求職者側は無料で我々の転職サービスを使うことができます。
ーー ドライバーが気軽に転職活動ができる。そこが多くの方に支持されている理由と言えそうですね。会員はどのような方が多いのでしょうか。
野呂 登録者は特に20代から40代など若いユーザーも多いのが特徴ですね。
ーー 若い方が中心なんですね。これも御社の強みといえそうです。
野呂 物流業界のドライバーは、現在50代以上が半数を占めていますので、このままいくと10年後、20年後にはドライバーがほとんどいなくなってしまう。なので、若い担い手をいかに増やしていくかというのが非常に重要です。
したがって、30代40代の方に、いかにこの業界に興味持っていただくか、引き続きこの業界に残っていただくかか、というのが重要になります。
業界内での転職もそうですし、異業種、例えば飲食などから物流に興味持ったというような方もいらっしゃいます。エージェントとして他の業界にいた方を、この人手不足の業界にマッチングしていくというのは、非常に価値が高いと思っています。
ーー 異業種から物流業界に関心を寄せる若い方も増えている?
野呂 事務職だったシングルマザーの方がタクシードライバーに転向されて、年収が120万上がったというような事例がありました。事務職は、AIなどで今後なくなっていくリスクがある職種と認識している方も増えています。
一方で、ドライバーも自動運転などありますが、すぐに実現するわけではないし、すべてが自動運転になるわけじゃない。であれば、長く働ける仕事なんじゃないかと見直される可能性があると思っています。国もそこは注目しているのではないでしょうか。
ただ、物流の場合、運賃が上がってこないと、なかなかドライバーの賃金にも反映できないと思います。そこはまだタクシー業界より遅れている状況ですね。
<クロスマイルが運営する求人サイト「クロスワーク」(https://x-work.jp/)>

採用に成功する事業者は、業界・仕事の魅力をしっかり伝えている
ーー 現在は、どの運送事業者でも採用に必死です。採用がうまくいっている事業者に共通する傾向はあるのでしょうか。
野呂 経営者や現場の管理職の方が、採用や組織作りにコミットされている事業者さんは、うまくいっている感じがしています。
我々が支援している中で、直接、社長が合同説明会に来てドライバーの方を口説いたり、会社の環境を説明している会社さんがありますが、採用もうまくいって、ドライバーも定着しています。業界の魅力、仕事の魅力をしっかり伝えられている、こういう事業者さんは強いと思いますね。
トラックドライバーは、我々の生活を支えているインフラだと思うんです。これは介護業界なども同じですけれども、しっかり魅力を伝えていくことが重要だと思います。
ーー その一方で、採用してもドライバーが定着しない会社もある。
野呂 そうですね。入社してみたら、入社前の情報と違うというケースでの短期離職が一番多いです。
ホワイトカラーの業界だと、情報を事前に開示をして、お互いのギャップをなくすというやり方がよくあります。しかし、それを多くの物流事業者ができているかというと、そうではないのが実情です。
一方で、我々が支援している企業の場合、6カ月以内の定着率は96%です。これは業界の中でも高い数値になります。それは求職者にしっかりと事実を伝えることで、ギャップをなくしているという側面はあると思います。
また我々は、「ロジポケ教育」という名称で、教育のサービスも提供しており、入社後の教育や離職防止についても支援しています。求職者に対しても、もし、入社後に困ったことがあったら相談してくださいと言っているので、何かあれば相談に来る。そして、困っている内容を会社に伝える。そういう連携も行なって、転職者と採用企業をフォローしています。
ーー 「ロジポケ教育」はどのような内容なのでしょうか。
野呂 トラックドライバーの教育ができるサービスです。例えばトラックの整備の方法や点呼のやり方、事故を起こさないための指導などが受けられるようなサービスになっています。
外国人労働者向けの多言語対応もしており、動画なども提供してます。なので、採用から教育まで一気通貫でお客様にサービスが提供できるのが強みですね。
<運送業界に特化した業務改善・経営支援クラウドサービス「ロジポケ」(https://logipoke.com/)>

期待される外国人材の活用だが課題も多い
ーー 外国人材と言えば、現在、特定技能外国人ドライバーへの注目度も高まっていますが。
野呂 我々も外国人ドライバーの採用支援も行なっています。なので、特定技能の方も既に実績があります。
ですが、特定技能外国人ドライバーに関しては、社長自ら現地に行って採用する、といったオーナー企業の方が進みやすい傾向にあると思っています。
全体としては、まだ皆さん様子見している印象です。やはり外国人ドライバーを今の環境で受け入れられるのか、免許や運転技術なども含めて様々なハードルがある。そこをしっかりクリアして、かつ、そこにコストをかけて外国人を採用するのかというと、難しい面がある。
ーー 経験もないと、慎重にならざるを得ません。
野呂 さらに、途中で帰国してしまうリスクとか、現在の制度だと他の会社にも移れるとか、いろいろな問題があると思っています。そこまでやって受け入れるかというのは、もう本当に経営者側のスタンスになりますね。
外国人の方を受け入れて成長させたという成功体験を持ってる経営者の方は、既にそちらにシフトされているんですけど、それができない会社の方が現状は多いかなと思います
ーー となると、やはり今後も中心になるのは日本人の若手ということになりそうですね。
野呂 そうですね、そこがメインにはなるとは思っています。
ただ、それがどの程度の割合になるかは、まだちょっと読めない。結局、ドライバーが稼げる職業にならない限りは、大きく人が入ってくるという流れは生まれてこないと思うので、やはりそこが一番重要ですね。

業界再編はドライバーの待遇改善のチャンス
ーー 2025年6月にはトラック適正化二法が成立するなど、政府も物流業界の適正化に向けて動き出しました。その影響は感じられますか?
野呂 法改正の流れは、業界にとって良い方向になってきているという感覚はあります。
ですが、ドライバーの待遇改善みたいなところが、業界として一番重要だと思うんですけども、その動きは、まだそれほどでもないと思っています。
もちろん働き方改革などはあるんですけど、結局、運賃を引き上げても、ドライバーの給与を上げないと、人手不足の解決という点では厳しくなってくるので。そこはまだ動きとしては弱い。まだ、これからという感じだと思います。
ーー 運賃を引き上げた分を原資にして、ドライバーの給与を上げるというのが理想ですが、現状はそうなっていない。経営者の姿勢や手腕も問われますね。
野呂 現在、物流業界ではM&Aが増えています。トラック10台の会社が30台の会社に、30台の会社が100台の会社に、というように統合されていく動きが、全国で増えています。ということは、結果的に物流業界全体がプロフェッショナル化していく、経営者がプロフェッショナル化していくというのが、今後の動きになるかなと思っています。
それによって、運送会社の収益性が上がり、ドライバーの給与を上げて、待遇改善をして、運賃もしっかり確保するという経営スタイルになってくれば、結果、事業者としても業界としても良くなってくるのではないでしょうか。
ーー その中でクロスマイルさんが果たす役割とは?
野呂 そうですね、我々は本当に物流業界のインフラを裏側から支援していきたいと思っています。
ドライバーの離職に伴う人員確保や車両調達を自律的に行えるような、経営基盤を揺るがさない強固なシステムを、例えばAIなども活用しながら構築したい。採用から経営判断までを包括的にサポートできる仕組みを、我々が提供していきたいと考えています。
ーー やはりAIの活用というのは大きいテーマですね。
野呂 ノンデスクワーカーの産業は、現状ではそもそもデータがないので、今はその前の段階かとは思っているんですけれども、すごいイノベーションは起きる可能性はある。
例えばアメリカなどでは、AIの活用が盛んです。
配車係が案件を受けて価格交渉して、というのを全てAIでやっているスタートアップもあります。人間は裏側で、最終的な判断を承認するだけで、同時に複数の案件を捌けるような状態になってきたりしているんです。
対して日本の今の物流業界は、依然としてアナログで運行指示書を出したり価格交渉したりとか、荷物を出す先がなければ、運送会社に手あたり次第電話をかけて交渉するのが主流です。このプロセスがデジタルへ置き換わるだけでも、業界全体に劇的なイノベーションを巻き起こせるかなという感じはしてますね。
ーー その意味では、法改正は役に立っている感じがします。
野呂 おっしゃる通りですね。今はどの会社さんが誰に対して、どういう金額で、どこからどこに運んでみたいなデータがないので。
そこが1番重要だと思うんですけど、なかなか難しいですね。そもそもドライバー・車両データをクラウド化している会社が少ない。かつ、荷物のデータとそれを紐付けたデータがない。荷物も多いので、全て管理するのが非常に大変です。
現在は、荷主と物流会社が使ってるシステムがバラバラで、かつその物流会社も多重化した構造になっている。そのシステムの共通化は、時間が掛かります。早くても3年、5年とかのスパンになる感じです。

運送事業者と荷主をつなぎ、物流を最適化していく
ーー 今後の物流業界は、どのようになっていくと見ていますか。
野呂 人手不足に関しては、国内の労働人口で全てをカバーできるかというと、人口自体が減ってくるので難しいところは正直あると思います。
ただ、それによって、物流の価値がより高くなってくるかもしれないですね。
当たり前のように毎日ものが届くというよりは、お金を払った方がある程度早く受け取れるとか、そういうふうになる可能性は全然あるとは思っています。
今の日本の物流品質は、世界的に見ても高い水準にある。ですが、過剰にサービス提供している部分もあると思います。運送会社さんも、安い運賃で引き受けてしまっている。人が足りなくて運べなくなると、そこの見直しがかかる可能性は高いです。
ーー だんだんと適正な形になっていく?
野呂 という感じです。じゃあ、人をどこから調達するかっていうと、もう他の産業か若手か外国人かしかいない。
が、多くの若手を入れるには、やはり待遇改善しないと無理ですし、他の産業からも同様です。外国人のところもまだちょっと読めません。これは国の方針としても読めないところがあるので。
人手不足の物流供給側の交渉力が上がってきて、適正な運賃で仕事を取って、かつドライバーさんに給与を還元していくような仕組みを業界全体で作ることができれば、ドライバーをやりたい方が増えてくる。そういう流れになってくるとは思うんですけどね。
ーー クロスマイルさんは、荷主向けのサービスも提供されているんですね。
野呂 そうですね。荷主さんといっても白ナンバーで自社でトラックを持っている会社もあります。
バース管理のシステムも提供しているので、荷待ち時間などのデータも、荷主さんに提供しています。
いわゆる受発注管理システムも提供しており、運送事業者さんと荷主さんを繋げるような存在にもなれたらいいかなと思っています。
今、物流業界で今問題なのは、荷役時間も2時間以内でとか言われてますけど、じゃあ倉庫側にそれだけ人がいるかっていうといない。フォークリフトも足りない。
ーー 両方を同時に改善していく必要がありますね。
野呂 荷主さんと運送会社さん両方のサービスを複合的に提供することで、将来的にそれが統合して共通化したりとか、業界全体の流れを作っていけるとは思っています。
最終的には荷主さんと運送会社さんの使うシステムを統合して、共通化して、その中で完結できるとデータとしても統合していけるので、それは実現したいところです。
ーー 最後にトラックニュースの読者に一言。
野呂 弊社は、ドライバーの採用という非常に分かりやすいソリューションを提供しており、会員数も100万人を突破と多くの方にご利用いただいています。
サービスも月額とか初期費用とかも一切かからず、完全成果報酬でやっているので、わかりやすく使えるサービスと思っています。
また、安全教育や労務管理など、そういうシステム化も、中小規模の事業者さんでも使えるような低コストで提供しているので、クロスワークとロジポケ、ぜひ使っていただきたいと思ってます。
(取材・文 鞍智誉章)
■クロスワーク(https://x-work.jp/)
■ロジポケ(https://logipoke.com/)
【野呂寛之氏略歴】
EVスタートアップのベトナム支社にて事業立ち上げ、カンボジア拠点長を経験。帰国後、Payme創業に2番目社員として入社、取締役COOに就任しFinTech・SaaS事業を管掌。2019年にX Mileを創業、Forbes JAPAN「2024年注目の日本発スタートアップ100選」に選出。国際基督教大学卒。
佐川急便/営業部長、デジタル企画部長、北海道支店長の人事異動(4月10日付)