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2025年07月01日 17:21 / 車両・用品
T2は7月1日、ドライバーがハンドルから手を離すことができる「ハンズオフ運転」が可能レベル2自動運転トラックによる幹線輸送の商用運行を、関東~関西間で開始した。自動運転トラックによる幹線輸送の事業化は国内初。
今回、佐川急便、西濃運輸、日本郵便、福山通運、三井倉庫ロジスティクスの5社の荷物の配送を、一般貨物自動車運送事業の許可を得ているT2が受託する。現在、20社を超える企業と協業を同時に進めており、今後、商用運行の規模を拡大する。
商用運行開始に伴いT2は、パートナー企業である西濃運輸とともに都内で説明会を開催した。
T2の國年賢事業開発本部本部長は、「我々が目指す自動運転は、昼夜いつでも走れる状態を目指している。そのため、1日あたりの回転数をしっかりと上げる。いま、有人運転では、東京ー大阪間が、大体2日で1往復となっているが、自動運転になると休憩がいらなくなるので、1日1往復できるようになる。このオペレーションをしっかり作る。まずは、レベル2で人が乗った状態でそのオペレーションを作って、無人化することを考えている」とレベル2での商用運行の目的を説明した。
西濃運輸運行部運行課の渡辺俊幸参事は、「現在、差し迫っている労働力不足、2024年問題への対応、労働時間の削減など、非常に苦慮している。通常の有人運行では600kmぐらいが限界で、その先はモーダルシフトを中心に運用している。関東・関西といっても、エリアの拠点から離れた地域もあり、その中で翌日配達、翌日午前中配達を維持するには、自動運転を含めた技術に頼るところがある。数年後には、我々としても走れる距離が短くなっていく中で、リードタイムを維持してお客様の期待に応える運用が可能になれば、物流業界の一つの武器になる」と自動運転トラックへの期待を述べた。
初回運行ルートは、西濃運輸は、相模原支店(神奈川相模原市)から大阪西支店(大阪府大阪市)までのルートのうち東名・厚木IC~京滋BP・久我山JCTを、佐川急便では中継センター・営業店の「Tokyoビッグベイ」(東京都江東区)から京都八幡営業所(京都府八幡市)までルートのうち東名・綾瀬スマートIC~京滋BP・巨椋ICをレベル2自動運転トラックで走行する。また、日本郵便は東名・厚木IC~京滋BP・久我山JCT、福山通運は東名・綾瀬スマートIC~名神・豊中IC、三井倉庫ロジスティクスは東名・綾瀬スマートIC~名神・吹田ICを初回運行ルートとして使用する。商用運行では、T2トラックとドライバーが出発地の拠点から到着地の拠点までの配送を担う。
実証実験から商用運行に移行することに伴い、運行本数は1月時点では月間8便だったが、7月は4倍以上の34便に増強、8月、9月と運行本数を拡大する計画だ。また、運行頻度は週1回から週5回まで高める。運行区間は、6月に走破した東名・横浜青葉IC~阪神高速・魚崎出入口までの約500kmに加え、2028年以降に四国・九州への延伸を図る。
実証フェーズではエンジニアが主体となり、ドライバーとエンジニアの2人体制で運行していたが、商用運行では、ドライバーのみのワンマン運行を実施する。ワンマン運行の自動運転トラックをT2の運行管理拠点のみでオペレーションできる体制を目指す。
商用運行で配送する積荷は、佐川急便は手積み対応の宅配物、西濃運輸はパレットやかご車に積んだ特別積合せ貨物の荷物、三井倉庫ロジスティクスは家電、冷凍ケースを運ぶ。実証実験では、荷物ごとの重心バランスのとり方の知見がなかったが、実験を通じて荷物ごとの重心バランスを理解し、多様な荷物に対応できる体制を整えた。
これまでの実証実験では、「直線走行」のほか、運転技術が必要な「車線変更」「JCT通過」といった難易度が高い運転もクリアした。東名・横浜青葉IC~阪神高速・魚崎出入口の約500kmでは、車線変更9カ所、JCT4カ所、長距離トンネル17カ所(総距離約60km)の自動運転の実現における難易度の高い関門をクリアした。また、荷物にダメージがないことやリードタイム内に配送できたかといった輸送品質についても実証実験参加企業と双方でチェックして商用化に至った。
<T2自動運転トラックの走行>
※動画作成・提供T2
レベル2自動運転トラックは、ドライバーが乗車しているため、通常のトラックと同様に4時間に1回30分の休憩をドライバーが取ることが義務付けられている。また、ハンドル付近に手を近づける体勢を維持することによる疲労を軽減するためのシートを新たに設置した。
また、同乗するドライバーの安全対策として、眠気などを感知するスマートウォッチを活用して健康状況をリアルタイムに把握する。そのほか、運行管理者とチームスペースでつながっているため、SA・PAで休憩に入るタイミングなどで声をかけて、コミュニケーションを図ることで眠気の軽減を図り、体調状況の変化をすぐに察知できる仕組みを構築した。
悪天候に対しては、現時点では10ミリの雨でも走行できることは確認している。雪への対応はこれからの課題で、商用運行時にトラックの運行を止めないため、降雪時は有人ドライバーによる運行も想定している。
現時点では、自動運転トラックが5台しかないため、T2が主体となって、運送事業者5社の荷物の運行計画を調整している。トラックの台数を増やしながら、柔軟な対応を可能にする予定だ。
T2では、2027年10月からのレベル4自動運転トラックの事業化までに25台以上のトラック保有を目指しており、2028年度に150台、2029年度に500台、2032年に2000台以上のトラック保有を計画している。
また現在、自動運転トラックは一般道は走行できないため、一般道の走行や一般道から高速道路の自動運転の切り替えを行うためのドライバーを15名採用している。保有トラックの増加に合わせて、ドライバーも2032年には1000名体制を予定している。
自動運転トラックの事業化による投資回収について、國年本部長は、「レベル2のオペレーションでは、ドライバーが同乗するため、黒字化はできない。レベル4の完全自動運転が実現して、はじめて事業としての採算性が見込める」と述べた。
現状の自動運転トラックの導入コストは約1億円程度だが、量産体制になれば、導入コストは半減できる見通しで、レベル4自動運転トラックによる商用運行開始を計画通りに進めることを目指す。また、T2が開発した自動運転トラックのリース契約による運送会社への提供も計画している。