トラック最前線/トラックボデー製造を変える?簡単施工で寿命は35年以上の高性能防水テープ「Eternabond」
2025年08月05日 16:01 / トラック最前線

トラックボデー製造で欠かせないのが防水処理だ。しかし、その工程は作業者に熟達した技術力が求められる上、施工には時間も掛かる。多くの受注残がありながら人手不足が続くボデーメーカーにとっては悩みのタネといえるだろう。そこで注目したいのが積水フーラー(東京都港区)の防水テープ「Eternabond(エターナボンド)」である。簡単かつ短時間で施工でき、そのうえ35年以上という長寿命を誇る、優れた防水テープだ。
需要に供給が追い付かない、ボデーメーカーの悩み
現在、日本の多くの企業が直面しているのが、人手不足という課題だ。物流業界では特にトラックドライバーの不足がその代表例として挙げられるが、これは製造業であるトラックメーカー、架装メーカーも同様だ。ボデーを組み立てる作業者も同じように不足しており、しかも年々深刻さを増している。特に熟練者の確保は難しい。
一方、トラック市場全体を見てみると、トレーラを含む大型車両への需要が伸びている。これはドライバー不足への対応策の一つだ。一度に多くの貨物を積める大型車両に代替することで、少ない台数で従来と同じ量の貨物を輸送しようというわけである。
そのような背景から、現在、大型ウイング車などへのニーズが高まっている。パレット荷役にも最適であり、大量の荷物を一度に積載し、効率的に積み下ろしできるのがその理由だ。同様にダブル連結トラックやスワップボデー車などへのニーズも高まっている。
そこで架装メーカーには多くの注文が集まっているのだが、その結果として、納期の長期化が課題となっている。もちろん、それには材料不足もあるが、人手不足も大きな要因だ。人手が足りず、作業が追い付かないから納期が延びるというわけである。さらにいえば、作業者の人数さえ揃えばいいというわけではなく、熟練者でないと難しい工程もある。そこで注目したいのが、積水フーラー社の防水テープ「Eternabond」だ。
独自技術でプライマー不要な防水テープ「Eternabond」
積水フーラー社は、積水化学工業と米H.B.フーラーという日米の著名大手化学メーカーのJVとして2005年に設立された会社だ。接着剤、シーリング材、化学工業製品の開発・製造・販売を行っており、衛生材料から包装・紙加工製品、住宅建材、機能性接着剤など幅広い分野で事業を展開している。特に高性能なオレフィン系包装用ホットメルト接着剤は業界トップの実績を誇るという。
この積水フーラー社が、現在、拡販に向けて注力しているのが「Eternabond」である。これはH.B.フーラーのミシガン工場で生産している製品で、海外では既に15年以上販売している製品だ。積水フーラーのパーギャンディー社長は「北米、欧州など海外市場で既に好調な業績を上げている製品。ぜひ日本でも普及させたい」と意気込みを語る。
<積水フーラー スコット・A・パーギャンディー社長>

さて、このEternabondは、幅広い用途に使用できる防水テープだ。紫外線に強く、マイナス57℃~約110℃以上まで性能を維持、シリコンを除くほとんどの基材に使用でき、35年以上という圧倒的な寿命を誇る。このような特徴から、特に雨に晒される屋外で使用されることが多い。
そして特筆できるのは、プライマーが不要というところだ。
トラックボデーを製造する際、防水のためパネルの継ぎ目などにコーキングするが、そのためには、まず前処理として清掃し、それからプライマー(下塗り材)を塗布して乾燥させる必要がある。その後にコーキング材を注入するのだが、作業者によって仕上がりに差が出ることも多く、またプライマーもコーキング材も乾燥に時間が掛かる。気温が低い時は、さらに乾燥時間が長くなる。
「Eternabond」は、作業は防水が必要な箇所を清掃後、テープを貼っていくだけだから、いたって簡単。プライマーも不要、乾燥時間も必要ない。さらに約4℃の低温でも施工できることも強みだ。幅広い環境下で作業を進めることができるから、納期を大きく短縮することが可能なのである。
そのような特性から、海外ではトレーラや電車、キャンピングカーの製造工場はもちろん、屋根の補修といったDIYでも非常に多く使われているという。普通のコーキング材では難しい、表面に凹凸のあるような形状でも使えるのもポイントだ。
<幅広く活用できるEternabond>

独自技術で優れた特徴を実現
このEternabondの優れた特徴を実現したのが、H.B.フーラー社の「マイクロシーラント」という独自技術だ。
<独自技術の「マイクロシーラント」>

Eternabondは微細な合成ポリマー(高分子化合物)で構成されているのだが、その中にプライマーを内蔵しているのが大きな特徴。このため施工時にプライマーを塗布する必要がなく、かつ素材に分子レベルで結合するため、高い防水性能や紫外線や熱に対する安定性を実現しているという。
また有害なVOC(揮発性有機化合物)も出ないので、作業環境の改善という点でも効果がある。
このように優れた特徴から活用の幅が広いEternabondだが、それに合わせるように豊富なバリエーションが用意されているのもポイントといえるだろう。幅は13mmから1524mm、長さは3mから30.48mまでのバリエーションがあり、厚みや表面も様々なタイプが用意されている。このため、使用する箇所や作業内容に合わせて最適なものが選択できるのだ。
日本のニーズに合わせて提案していく
優れた特徴を実現しているだけに、Eternabondは海外では既に多くの実績を持っている。この理由についてパーギャンディー社長は「その国に合わせたカスタマイズを行ってきたことも成功の秘訣だと認識している」と説明する。
Eternabondの場合、機能面では世界中のニーズに対応出来ることは間違いない。その上で、国や地域、業種で異なるニーズに合わせて、それぞれに最適なサイズや形状が選べるよう、バリエーションを拡充してきたことも成功につながったことは間違いないだろう。そのため日本市場での展開についても「多くのお客様のニーズに合うようカスタマイズも含めて、提案していきたい」という。
<豊富なバリエーションが用意されている>

先に述べたように、日本の製造業は人手不足が大きな課題。さらに長期間使われるトラックやトレーラは、使用途中で補修が必要になることも少なくない。
そのような中で、短時間で簡単に施工でき、35年間もの寿命を誇るというEternabondは、製造時はもちろん、補修時にも最適な防水用テープといえるだろう。車体メーカーにとって、非常に心強い存在である。海外に続いて、日本でも多くの現場で使われることになりそうだ。(鞍智誉章)
トラック最前線/脱炭素目標達成に向けたヤマト運輸の取り組み