トヨタ/商用車向け次世代燃料電池システム、26年の実用化目指す
2023年06月14日 11:54 / 施設・機器・IT
トヨタ自動車は6月8日、「クルマの未来を変えていこう」をテーマにした技術説明会「Toyota Technical Workshop」を開催し、モビリティカンパニーへの変革を支える様々な新技術を公表した。
説明会では、全個体電池などEV向けの次世代バッテリーや燃料電池(FC)など次世代電動技術をはじめ、多くの最新技術が披露されたが、その中で燃料電池市場が商用車を中心に拡大していくビジョンも示された。
燃料電池について、7月から新たに設置される水素ファクトリーのプレジデント(7月1日付就任予定)山形光正氏は、「2030年の水素市場は、欧州、中国、北米の規模が圧倒的に大きく、燃料電池市場は2030年に向けて急速に市場が広がり、年間で5兆円規模になると予測している」と説明する。その需要の大半はトラックなど商用車だ。トヨタにはMIRAIの水素ユニットを使って燃料電池の外販を行っており、2030年に10万台分の燃料電池のオファーがきているというが、その内訳も大部分が小型商用車と大型トラック向けという。
<市場見通し>
<水素ファクトリー 山形プレジデント>
この急激に伸長していく燃料電池市場に対応していくためにトヨタが設置した新組織が、「水素ファクトリー」であり、今後「マーケットのある国で開発・生産」「有力パートナーとの連携強化」「競争力のある次世代FC技術の革新的進化」の3つを軸に事業を推進していくという。
まず「マーケットのある国で開発・生産」については、欧州、中国を中心に現地に拠点を設け、取り組みを加速していく。これは水素の需要が地域によって大きく異なっているためだ。2030年時点で、水素の全使用量は欧州が2500万トン、中国は4000万トン、北米は2500万トンを予測、このうちモビリティ活用目標は欧州が230万トン、中国は数百万トン。北米は目標値がなく不明である。ちなみに日本は全使用量300万トン、うちモビリティ活用目標は8万トンで、欧米中と比べると規模が非常に小さい。水素事業を成立させていくには、まずはボリュームを拡大させていく必要があり、そのため特にモビリティ向け需要の規模が大きい欧州、中国が重点地域ということになる。
<水素市場の規模>
欧州では既にTME(トヨタモーター・ヨーロッパ)で開発・外販を行っており、早急に生産拠点も構えていく予定。中国では北京億華通科技(シノハイテック)と共同で開発・生産拠点を設置済み。2024年4月から燃料電池の生産を開始するという。
「有力パートナーとの連携強化」も、水素事業の規模拡大が大きな狙いだ。先日発表したダイムラー・トラックとの提携の中にも水素関連での協業という項目が盛り込まれており、この機会を活かしながら欧州の商用車メーカーとも連携し、数をまとめることで低価格化を実現していくという。また中国では広州汽車、第一汽車、北汽福田、東風汽車、シノハイテックとの6社連合を2020年に設立。約半数のシェアを持つこれらメーカーとの関係を構築しており、ここでもしっかりと数をまとめることで低価格化を図りたいとしている。
「次世代FC技術の革新的進化」については、発電量が現行の130%となる次世代セルを開発中であると説明。これは商用ユース(高寿命、低コスト、低燃費)に応える業界トップクラスの性能を実現するもので、2026年の実用化が目標。ディーゼルエンジン車を凌ぐメンテナンスの容易さ、スタックコストは現行の1/2、航続距離は20%向上を見込んでいる。
これらの取り組みにより、次世代のシステムでは37%の原価低減を実現するという。燃料電池車の普及を妨げている要因には、水素そのものの価格や供給インフラもあるが、車両価格の高さも大きな要因となっている。これを技術進化、量産効果、現地化によって下げることで、普及にも弾みがつくことになりそうだ。ちなみに37%の原価低減は10万台オファーの場合だが、これが20万台になった場合は50%の低減になるという。
<事業・収益見通し>
その他、水電解装置やバイオガスによる水素製造など、水素を「つくる」技術も披露。燃料電池トラックの需要は、2030年代に向けて加速度的に増していくことと思われるが、これを実現する大きな柱として、トヨタの次世代技術には大いに期待されるところである。
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