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2025年06月27日 17:42 / 経営
国土交通省は6月25日、点呼不備問題から日本郵便のトラックなどを使った運送事業の許可を、「貨物自動車運送事業法」に基づき取り消した。
日本郵便が行う郵便・物流事業は、トラック、軽自動車、二輪車など多様な輸送形態で行われている。このうち約2500台のトラックが今回の許可取り消しで使用できなくなったが、多数を占める軽四輪や原付バイクについては通常通り使用できるため、日本郵便では「郵便やゆうパックのサービスが滞る事態は発生していない」と説明している。
では、なぜ車両によって処分が異なるのか。またその他の行政処分や対応についても、どのような規則に基づいているのか。
今回、トラックニュース編集部では、25日の国交省での会見時に公開された資料を基に、日本郵便の点呼不備問題の構造と行政処分の関係について整理した。
日本郵便の一般貨物自動車運送事業の許可取消処分は、貨物自動車運送事業法(いわゆるトラック法)に基づき行われた。貨物自動車運送事業法は、輸送の安全性確保や荷主保護・適正な取引環境確保に係る体制整備を目的とした法律で、車格ごとに規制の違いがある。
排気量660cc超のトラック(緑ナンバー)、排気量125cc超~660cc以下の二輪車・軽自動車(黒ナンバー)について対象としており、排気量125cc以下の原付バイク、自転車、徒歩による運送は規制の対象外となっている。
<日本郵便の輸送ネットワーク全体像とトラックを使用した業務範囲>
出典:日本郵便発表資料
これを日本郵便が発表した「輸送ネットワークの全体像とトラックを使用した業務範囲」に当てはめてみると、今回の許可取消処分の対象は、大口顧客から集配局への集荷、集配局から小規模集配局への運送を担っていた約330局のトラック約2500台となる。日常生活で多く見かける軽自動車(約3万2000台)、原付バイク(約8万3000台)は許可取消処分の対象外であり、この処分により運送が止まることはない。
ただ、原付バイクの対応については、日本郵便は独自にトラック法に準じた点呼を実施しており、トラックと同様に社内調査を実施中。この調査結果は7月頃に発表される予定だ。
※参考記事
日本郵便/点呼不備問題で二輪への対応表明、調査結果は7月発表
では、そもそも許可取消処分の原因となった「点呼」とは何か。
国交省では、点呼について「乗務前において、運行管理者等が、運転者からの報告、顔色等の観察、アルコール検知器の使用等により、酒気帯びの有無、健康状態、事業用自動車の状態等を確認するとともに、安全確保のため必要な指示を与えるもの」と定義している。
そして、貨物自動車運送事業法、貨物自動車運送事業輸送安全規則では、「自動車運送事業者は、運行の業務をしようとする運転者、運行の業務を終了した運転者に対して原則対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法)により点呼を行わなければならない」と規定している。
自動車事故のほとんどの要因は、人的要因によるものであり、運転者が安全に運転できる状態であることが不可欠となる。またトラック事業は、反復して運送行為を行うため自動車事故のリスクが高くなる。そのため、事業者には点呼が義務付けられており、運転者の疲労、酒気帯びなど安全に運転できない恐れがないかを確認している。国交省では「点呼は安全輸送の要」と位置づけている。
国交省 物流・自動車局安全政策課の西山紘平課長補佐(総括)は、会見で「今回、日本郵便において組織的に多数の営業所で点呼を実施しない、あるいは点呼を実施していないのに実施したという虚偽の記録を行う、いわゆる不実記載があったことは、まさに輸送の安全を揺るがすもので、自動車運送事業者として極めて重大な違反であり、極めて遺憾である」と会見で述べている。
この点呼不備を受け、国交省は立ち入り検査等を行い、日本郵便が行う一般貨物の事業許可の取消処分と日本郵便が行う運行管理者(点呼の責任者)211名分の資格取消処分を行っている。
今回、国交省は日本郵便に対して、一般貨物の事業許可の取消処分を行ったのに合わせて、航空貨物運送等の前後で日本郵便が自ら行うトラック運送(第二種貨物利用運送事業)についても、6カ月間の事業停止処分とした。
「貨物利用運送事業」とは、海運・航空・鉄道の実運送事業者を利用して貨物を運送する事業のこと。集荷から配達までの複合一貫運送サービスを行うか否かにより、第一種と第二種に分類される。
日本郵便では、約2500台のトラックが運行停止となったことで、港・空港・貨物駅までのトラックによる輸送ができなくなったため、今回の事業停止処分となった。
一方で、これらの運送業務を他社に委託するため、日本郵便では第一種貨物利用運送事業を新規登録した。これにより、他の運送会社を利用して、港、空港、貨物駅までの運送を維持する。第一種貨物利用運送事業は、他社に対して運行業務を委託できる資格だが、一般貨物の事業許可を持つ事業者が他のトラック事業者を利用する場合は、トラック運送事業法上の事業計画へ記載すれば登録は不要となる。
日本郵便は6月24日までに、自社のトラックによる配送を他社への委託及び自社の軽四輪に振り替えているが、この時点の運送委託は一般貨物事業者としての資格に基づいている。今後、他社へ運送委託をする場合は、第一種貨物利用運送事業の登録事業者としての委託になる。
<今回の処分対象と日本郵便の輸送体制>
出典:国交省発表資料
さらに国交省は、日本郵便の一般貨物の取消に伴い、日本郵便の軽貨物事業への移管と子会社である日本郵便輸送への委託が行われることを踏まえ、これらの者における輸送の安全体制の確保を図るため、「日本郵便が行う軽貨物事業に対する安全確保命令」と「日本郵便輸送が行う一般貨物事業に対する報告徴収」の行政処分を行っている。
具体的には、日本郵便と日本郵便輸送に対し、それぞれ「点呼不備等の法令違反が発生しないよう、一般貨物自動車運送事業の許可取消処分を踏まえ、日本郵政グループの物流体制の変化を反映した再発防止策(再発防止策の遂行に必要な体制の整備を含む)を策定すること」「再発防止策に関する実施計画を策定し、当該実施計画に基づき貨物軽自動車運送事業を経営すること」「実施状況を文書により報告すること」を求めている。