トラック最前線/物流課題解決に向けた日本トレクスの取り組み トラックからのステップアップを支援する 「トレクスドライビングスクール」を体験(前編)

2026年03月27日 09:30 / トラック最前線

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ドライバー不足や労働時間規制への対応が求められるなか、物流効率を高める輸送手段としてトレーラへの注目が高まっている。一度に多くの貨物を運べる。ただ、一般的な大型トラックとは異なる車両特性を持つだけに、安全運行には正しい知識と運転技能の習得が欠かせない。今回、愛知県豊橋市のとよはし産業人材育成センターで行われた日本トレクスの「ドライビングスクール」を取材し、座学と実車講習を通じて実際にセミトレーラ運転の基本を体験した。
取材協力:日本トレクス株式会社
取材場所:とよはし産業人材育成センター(愛知県豊橋市)
取材・文:山城利公 モータージャーナリスト

久しぶりに握るセミトレーラのハンドル

トレーラ輸送は、大量輸送を支える物流の重要な手段のひとつだ。近年はドライバー不足や輸送効率向上の観点から、セミトレーラやダブル連結トラックなど、より多くの貨物を一度に運べる車両への関心が高まっている。幹線輸送の現場では、限られた人員でいかに輸送力を確保するかが大きな課題となっており、その解決策のひとつとしてトレーラの存在感は一段と増している。

もっとも、積載力が高いからといって、誰もがすぐに扱える車両ではない。車両の長さ、内輪差、後輪の軌跡、バック時の挙動など、一般的な大型トラックとは異なる特性があり、安全に走らせるにはそれに応じた理解と経験が求められる。物流効率化の切り札として期待される一方、その性能を十分に生かすには教育と訓練が欠かせないのである。

こうした背景のもと、日本トレクスではトレーラの安全運行を支える取り組みとして昨年から「トレクス ドライビングスクール」を実施している。今回、同スクールを取材し、座学と実車講習を通じてトレーラ運転の基本を体験する機会に恵まれた。

トレーラの構造や法規を学ぶ座学講習

実車講習に入る前に行われたのが、トレーラの基礎知識を学ぶ座学講習。ここでは日本トレクスの事業概要に加え、トレーラの種類や構造、トラックとの違い、関連法規、安全装置などについて説明が行われた。実技を前に車両の成り立ちや特性を整理しておくことで、なぜその操作が必要なのか、なぜ注意しなければならないのかを理解しやすくする狙いがある。

<実車講習に先立ち、トレーラの構造や法規、車両特性などを学ぶ座学講習が行われた>
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講習でまず示されたのは、トレーラが決して特殊な一部の輸送機材ではなく、日本の物流を支える現実的かつ重要な存在であるということだ。日常の道路でも見かけるウイングセミトレーラ、コンテナセミトレーラ、平床セミトレーラなどは、それぞれの輸送ニーズに応じて使い分けられ、幹線輸送や港湾輸送、重量物輸送などさまざまな現場で活躍している。

トレーラには主に「セミトレーラ」「フルトレーラ」「ポールトレーラ」の3種類がある。このうち今回の講習の中心となったセミトレーラは、トラクタのカプラ(第5輪)とトレーラ側のキングピンを連結して使用する構造で、荷重の一部をトラクタ側が支えているのが特徴だ。物流現場で最も一般的に使われているのもこのタイプであり、効率性と汎用性のバランスに優れている。

一方、フルトレーラは前後に車軸を持ち、トラクタ側が荷重を負担しない構造で、連結状態や走行感覚もセミトレーラとは異なる。さらに長尺物輸送に使われるポールトレーラも含め、トレーラと一口にいっても用途に応じて車種が分かれることが改めて整理された。前編では、そうした中でも物流の主役といえるセミトレーラに焦点が当てられた。

また、トレーラの運行には複数の法律が関わることも説明された。車両の構造や保安基準は道路運送車両法、道路の通行条件は道路法、交通ルールは道路交通法に基づいて定められている。とりわけ大型・長大車両では通行ルートや許可条件が重要になり、ただ運転できるだけではなく、どこをどの条件で走れるのかまで理解しておく必要がある。トレーラ輸送は高効率な反面、制度や法規の理解を前提とする、輸送形態でもあることがよく分かる内容だった。

国内有数のトレーラメーカー 日本トレクス

前半の座学では、日本トレクスの事業概要についても紹介された。同社はトレーラやトラックボデーの製造を手掛ける国内有数のメーカーであり、物流を支える車両づくりの中核を担う存在である。特にウイング系車両をはじめとした各種トレーラ製品に強みを持ち、現場のニーズに応じた幅広いラインアップを展開している。

紹介された主な製品には、ウイングセミトレーラ、コンテナセミトレーラ、平床セミトレーラ、あおり付きセミトレーラなどがあり、それぞれ異なる輸送現場で役割を果たしている。例えば、パレット輸送や一般雑貨輸送に適したウイング型、海上コンテナ輸送に対応するコンテナ型、鋼材や建材などの積載に向く平床型など、物流の多様化に応える製品群がそろう。

講習資料では、国内市場における同社の高いシェアにも触れられていた。こうした数字は単なる実績の紹介にとどまらず、日本の物流現場で同社の車両がどれだけ広く使われているかを示すものでもある。つまり今回の講習は、単にメーカーが自社製品を紹介する場ではなく、実際の物流を支える車両メーカーが、その運用に必要な知識と技能まで含めて発信しようとする取り組みと見ることができる。

<トレーラでトップシェアを誇る日本トレクス>
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さらに印象的だったのは、車両メーカーとして“つくる”だけでなく、“安全に使われること”まで視野に入れている点である。トレーラは高い輸送効率を持つ半面、誤った理解や不十分な運転技能のままではリスクも大きくなる。だからこそ、メーカー自らが講習という形で知識の普及や技術習得の機会を提供する意味は大きい。車両の性能と安全運行は切り離せないという考え方が、このスクール全体を通して感じられた。

トラックとは異なるセミトレーラの車両特性

講習では、一般的な大型トラックとトレーラの違いについても分かりやすく説明が行われた。大型トラックの全長が約12mであるのに対し、セミトレーラは約17m、さらに後編で扱うダブル連結トラックでは約25mに達する。長くなればその分、一度に運べる貨物量は増えるが、当然ながら走らせ方も大きく変わってくる。

特に違いが表れやすいのが交差点での右左折である。セミトレーラは車体が長いうえ、トラクタとトレーラが連結して動くため、後輪の軌跡がトラック以上に内側へ入りやすい。いわゆる内輪差が大きくなるため、交差点進入時には進路の取り方、ミラー確認のタイミング、速度の落とし方など、すべてを早めに意識しなければならない。道路上で安全に扱うには、単に“長い車”という理解では不十分で、車両全体の軌跡を頭に描きながら運転する必要がある。

また、トラクタとトレーラはキングピンとカプラで連結され、ブレーキ制御にはエアラインが用いられる。講習では、ブレーキ信号を伝えるコントロールラインと、常時エアを供給するサプライラインの役割についても説明があった。日常の運行では見過ごされがちな部分かもしれないが、こうした連結機構やエア供給の理解は、安全運行の土台そのものなのである。接続の確認や順序を誤れば重大事故につながりかねず、構造理解の重要性を改めて感じさせる内容だった。

さらに安全装置として紹介されたのが、ROC(ロール・オーバー・コントロール)だ。これは横方向の加速度を検知し、横転の危険が高まった際にブレーキ制御を行って車両姿勢を安定させる装置である。高い輸送力を持つトレーラでは、重心の変化や旋回時の挙動が安全性に直結するだけに、このような電子制御技術の役割も大きい。トレーラは“運転が難しい車両”として語られがちだが、近年は安全装置の進化によって、適切な教育と組み合わせれば、より実用的で扱いやすい輸送手段へと進化していることがうかがえた。

<横転を防止する「ROC」>
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外周走行からバック操作まで 実車で運転感覚を確認

座学を終え、いよいよ実車講習へ。最初に乗り込んだのはセミトレーラだ。筆者自身、かつて長年にわたりトレーラを運転していた経験があるものの、実際にハンドルを握るのは久しぶり。運転席に腰を下ろし、ミラーの位置を確かめ、前方を見据えると、自然と気持ちが引き締まる。経験があるからこそ分かる、トレーラ特有の緊張感がそこにはある。

<座学終了後は実車講習へ。まずはコース外周を走行しながらセミトレーラの車両感覚を確認した>
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実車講習では、まず外周コースを走行しながら車両感覚を確認することから始まった。久しぶりに乗るセミトレーラだけに、まずは無理をせず、車両の動きに身体をなじませていく工程が重要になる。発進し、速度をのせ、緩やかに操舵する。その一つひとつの動作のたびに、ヘッドの動きに少し遅れてトレーラがついてくる感覚が戻ってくる。

この“遅れてついてくる”感覚こそ、トレーラ運転の基本ともいえる。単体のトラックであれば、自分の感覚と車体の動きは比較的直結しやすいが、セミトレーラでは後ろの荷台が常に別の動きを伴う。だからこそ前方だけを見ていては足りず、サイドミラーを使って後方の軌跡を細かく確認する必要がある。外周走行は地味なようでいて、トレーラ運転の前提を身体に思い出させる大切な時間だった。

続いて行われたのが、交差点を想定した右左折訓練だ。ここではセミトレーラならではの内輪差の大きさがはっきりと表れる。右左折ではトラクタのノーズだけでなく、トレーラ後輪がどのラインを通るかを想定しながら進入しなければならない。進路を誤れば後輪が内側へ大きく入り込み、縁石や障害物、あるいは歩行者・自転車の進路に接近する危険が発生する。トレーラの安全運転は、まさに“後ろを見る運転”でもあることを実感する場面でもあった。

<交差点を想定した右左折やスラローム走行などを通じ、トレーラ特有の挙動を体験>
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コース内ではパイロンを用いたスラローム走行も行われた。長い車体でパイロンをかわしていくこの訓練では、操舵のタイミングと戻し方が重要になる。早すぎても遅すぎても、トレーラの後端が狙ったラインに乗ってこない。トラクタが向きを変えても、トレーラの動きはワンテンポ遅れるため、その遅れを見越して操作する感覚が求められる。経験者であっても、久しぶりに乗るとこの“間”を思い出すまでに少し時間がかかる。逆にいえば、その感覚が戻ってくると車両全体が少しずつ自分の手足のように動き始める。

講習の後半では、バック操作の訓練も行われた。トレーラのバックは、未経験者にとって最も難しく感じられる操作のひとつだろう。ステアリングを切った方向とトレーラの動きが逆になるため、頭では分かっていても、最初はつい修正が遅れたり大きくなったりしやすい。しかも一度角度がつきすぎると、立て直しには冷静な判断が必要になる。

実際の操作では、ミラーでトレーラの振れ方を確認しながら、少しずつ舵角を与えては戻し、必要に応じて細かく修正していく。トレーラのバックでは、後方を直接見る“直視”よりも、左右ミラーで車両全体の動きを把握することが重要になる。焦って大きく切るのではなく、動きを見て小さく直す。その繰り返しが基本だ。こうしたバック訓練を通じ、改めて感じたのは、トレーラの運転は力任せでも度胸だけでもなく、構造を理解し、挙動を読み、丁寧に操作する仕事だということだった。

そして何より印象に残ったのは、座学で学んだ内容がそのまま実車の挙動として現れる点である。長さ、内輪差、追従性、連結構造といった言葉が、実際にハンドルを握ることで具体的な感覚へと変わっていく。講習は知識と体験を結び付ける場として非常に意味があり、トレーラ教育の重要性を実感させる内容だった。

輸送効率向上を支えるトレーラ輸送の可能性

今回の講習を通じて改めて感じたのは、セミトレーラが持つ輸送効率の高さと、その特性を理解したうえで扱うことの重要性である。セミトレーラは単に「長い車」「たくさん積める車」というだけではない。大量輸送に対応しながら、物流現場で求められる実用性や機動性を備えた、非常に完成度の高い輸送機材ということだ。

その大きな特徴のひとつが、トラクタとトレーラを切り離して運用できる点にある。荷台を切り離して荷役作業を進め、その間にトラクタヘッドを別の業務に振り向けるといった使い方ができるため、車両稼働率の向上につながる。これは単純な積載量の多さとは別の意味で、物流の効率化に寄与する要素だ。限られた車両と人員をどう有効活用するかが問われる現在の物流現場において、この柔軟性は大きな強みといえる。

また、セミトレーラはその大きさ(長さ)ゆえに、幹線輸送の現場で高い実用性を発揮してくれる。確かに交差点や狭所では通常のトラック以上に慎重な操作が必要になるが、車両特性を理解していれば、輸送力と機動性を両立させやすい。今回の講習を通じて感じたのも、セミトレーラは“扱いにくい車両”なのではなく、“特性を踏まえて扱うべき車両”だということだった。正しい知識と操作を身につければ、物流現場にとって非常に頼もしい存在になる。

物流業界では、ドライバー不足や2024年問題以降の労働時間管理への対応などを背景に、より少ない運行回数やより少ない人員で、いかに輸送量を確保するかがますます重要になっている。そうしたなか、トレーラ輸送は効率化の有力な選択肢であり、その価値は今後さらに見直されていくだろう。メーカーや事業者にとっては導入効果の大きい輸送手段であり、荷主にとっても安定輸送を支える基盤となり得る。

そして、その延長線上にあるのがダブル連結トラックである。セミトレーラで培われた長大車両の運用ノウハウ、安全確認、進路管理、バックや旋回の考え方は、さらに長い25m級車両を扱ううえでの基礎にもなる。言い換えれば、セミトレーラを理解することこそが、ダブル連結への入口でもある。今回の前編で体験した内容は、後編で扱うダブル連結トラックの運転訓練につながる“土台”としても極めて重要だと感じた。

トレーラ輸送の可能性を広げるには、車両の普及だけでは足りない。安全に運用できるドライバー教育、車両特性の理解、制度への対応がそろってこそ、その力を十分に発揮できる。日本トレクスの「ドライビングスクール」は、そうした意味で、単なる体験会ではなく、物流の次の一手を支える実践的な取り組みといえそうだ。

次回の後編では、今回の講習の後半として体験した25mダブル連結トラックの運転訓練について紹介する。セミトレーラとはまた異なる長大車両の運転感覚と、その可能性に迫っていく。

<この研修(取材)を受けるために事前の準備から当日の手配まで大変お世話になった広報の南さん(左)と、細やかなアドバイスでポイントを解説してくれた技能講習を担当しいただいた中根さん(右)。本当にお世話になりました>
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■日本トレクス ドライビングスクール
https://www.trex.co.jp/products/driving-school/

【取材・文:山城利公(やましろ・としまさ)】
1963年・東京生まれ、モータージャーナリスト/プロドライバー
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
幹線輸送トレーラのドライバーとして200万km(約20年・地球50周以上)におよぶ無事故運行の実績を持ち、商用車技術と物流業界に精通。実体験と現場視点をもとに、クルマ社会の「今」と「未来」を発信するとともに、商用車関連の技術評価や実証プロジェクトにも関与している。
大型けん引免許(ダブル連結トラックSF25技能講習修了)/自動車整備士(国家資格)/整備管理者(選任資格)/国内競技運転者許可証A級(JAF公認)/JAF公認審判員ライセンス(コースA2/技術A2)/フォークリフト運転技能講習修了

物流課題解決に向けた日本トレクスの取り組み トラックからのステップアップを支援する 「トレクスドライビングスクール」を体験(後編)

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