トラック最前線/三菱ふそう eCanter試乗記 静かでスムーズ、ドライバーにも優しい新世代EVトラック
2023年05月17日 10:53 / トラック最前線
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三菱ふそうのEV小型トラック・eCanterが、今年3月にフルモデルチェンジ。独自開発のeアクスルを採用するなどドライブトレイン構造を大きく変更することで、28型式のシャシラインアップを展開、航続距離も大きく伸長し、多彩なニーズに対応することが可能になった。
今回は、この新型eCanterに試乗。テストコース内の短時間での試乗だったが、EVトラックとしての完成度は高く、ドライバーにも優しいトラックに仕上がっていることを実感した。
よりEVに最適化された新構造
2017年、世界初の量産小型EVトラックとして誕生したのが三菱ふそう「eCanter」だ。このeCanterが23年3月にフルモデルチェンジ。2代目となった新型eCanterは、シャシのラインアップを大幅に拡大するなど大きく商品力を高め、これまで以上に幅広いニーズに応えられるようになったのが、大きな特徴である。
ちなみに先代eCanterは、車両総重量7.5トン(積載量3トン)、ホイールベース3400mmの1型式のみ。これでは小型EVトラックの導入を検討したとしても、仕様が合わず導入できないユーザーも多かったはずだ。
一方、新型eCanterは、車両総重量は5トンから8トン、積載量でいうと2トンから3.5トン、ホイールベースでは2500mmから4750mmの5パターンが設定され、合計28型式から選択できるようになった。
<全28型式となった新型eCanter>

このバリエーション拡大を可能にしたのが、ドライブトレインに採用された新開発のeアクスルである。先代はエンジンこそないものの、パワートレーンの基本的な配置はエンジン車と同様で、車体中央にモーターを配置し、そこからドライブシャフトで後輪を駆動させる方式。これに対して新型では、モーターとインバーター、後輪駆動システムを一体化したeアクスルとして、車体後部に搭載し、EVならではのメリットをより活かせる構造となった。具体的にはドライブシャフトが不要になったことでシステムがコンパクトになり、多彩なシャシ展開が可能になったというわけである。さらにバッテリーからの電気で油圧ポンプを動かせる動力取り出し装置(ePTO)を新たに採用したことで、ダンプやクレーンなど、従来のエンジン車と同じ架装も可能になったことも大きな進化である。
<搭載された独自開発のeアクスル>

また搭載するバッテリーも先代は81kwh(航続距離約100km)の1種類だったが、新型ではSサイズ41kWh/Mサイズ83kWh/Lサイズ124kWhの3種類から選択可能となっている。航続距離はSで116km、Mで236km、Lでは324kmとなり、近距離から中距離まで、使い方に合わせた最適なモデルが選べるようになった。駆動モーターは2種類で、車両総重量5トン~6トンクラス車は最高出力150ps、7.5トンクラス車以上は最高出力175psのモーターを搭載。最大トルクはどちらも430Nmとなっており、ディーゼル車とほぼ同等の走行性能を発揮するという。
<搭載されるバッテリー>

ちなみに先代はバッテリーをシャシの両脇に配置していたが、新型ではドライブシャフトがなくなったことで、センターに配置。バッテリーも先代は三元系のリチウムイオンバッテリーを採用していたが、新型では長寿命かつ発火のリスクが少ないリン酸鉄リチウムイオンに変更し、より安全性が高められているのも特徴だ。
<バッテリーを車両中央に配置することでバリエーション拡大が可能になった>

ワンペダルで運転疲労も軽減
今回は、三菱ふそう・喜連川研究所内のコースで試乗した。設定されたコース自体は短いものの、10%勾配の急坂などもあり、日常域の実力がわかりやすいコースである。
まず運転席に座ってみて感じたのは、操作性・視認性の良さである。基本的な操作系の配置はディーゼル車と変わらないが、eCanterではメーターがフル液晶となり、車両の状況が一目でわかりやすい。またシートの座り心地やステアリングの感触も上質で、その心地よさはヘタな乗用車よりも上回るほど。毎日乗り降りするトラックだからこそ、これは嬉しいポイントだ。
<実用的かつ上質な運転席周り>

続いてスタータースイッチを回して、システムを始動。これはディーゼル車と同様なので、迷うことなく操作可能だ。もちろん、EVだけにONにしても音や振動はないが、メーター内に走行可能なことが表示されるので、まごつくこともない。
シフトレバーは常にセンターに戻るタイプ。Dレンジを選択すると、メーター内にDの表示と同時に、回生ブレーキの強さがB0~B3で表示される。先代eCanterの回生ブレーキの選択は強・弱の2つだけだったが、新型では4段階となり、好みや状況に応じてより細かく選択できるようになった。
B0はほとんど回生なし、最も強いB3であればワンペダルドライブ、つまりアクセルペダル操作だけで加減速調整がほぼ可能になる。回生ブレーキの選択は、シフトレバーを左に倒して上下に動かすだけなので、操作に迷うこともない。好みもあるが、混雑する街中ではB2~B3が使いやすいだろう。ワンペダル時の加減速も自然で違和感がなく、運転時の負担も軽減される。
エンジンがないEVだけに、走行中の余計な音や振動もない。普通の乗用車よりも静かに感じるほどだ。会場にはキャンターのディーゼルエンジン車もあり、比較試乗してみたが、その差は歴然。もはや別の乗り物といっても過言ではないほどである。あまりに静か過ぎて「トラックに乗っている気がしない」、と物足りなさを感じる人もいるというが、それも納得できるほどである。
ただし長時間、大きな音や振動の中での運転は、それだけで疲労するのも確か。ドライバーの負担を減らすという観点でも、EV小型トラックを導入する意義は大きい。厳しさを増しているドライバーの確保という点でもEVトラックは効果がありそうだ。
試乗車は、ほぼ空荷ということもあったが、パワーも十分で走りは軽快。発進時からトルクが一気に立ち上がり、スムーズに加速してくれるのでキビキビと走行してくれる。ちなみに最高速度は時速約90キロで、日常域で普通に使う分には不満はない。
<シームレスな加速で走りもストレスがない>

急勾配を登る坂道の途中でいったん停車し、そこからの再発進もラクにこなせる。通常なら速度がつきすぎて不安に感じる同じ勾配の下り坂も、強めの回生ブレーキを選択すれば、余計なブレーキ操作をすることなく、ゆっくりと下ることができる。フェードの心配もなく、余計な気を使うこともないのでストレスフリーだし、安全にもつながる。
ステアリングの操舵感も、クセがなく扱いやすい。やや軽めの設定で、かつ路面情報をあまり伝えてこないタイプだが、足回りに無駄な動きがないので不安はないだろう。心地よく運転に集中することが可能だ。
EVトラックは、まだまだ普及が始まったばかり。だからこそ、新型eCanterの架装も含めた豊富なバリエーションと、ドライバーへの負担の少なさには期待がかかるところ。今後の市場拡大に向け、大いに期待されるところだ。(鞍智誉章)
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