山梨県の大型トラック追突事故、再発防止「点呼を原則対面で」
2023年09月29日 16:55 / 交通
国土交通省は9月29日、2021年7月14日に山梨県甲州市の中央自動車道で発生した大型トラックによる追突死亡事故に関する事故調査報告書を公表した。
<当該車両>
事故は、農業資材、米穀等約7000kgを積載した大型トラックが片側2車線の第1通行帯を走行中、渋滞で停止中の車列最後尾の乗用車(1)に追突し、さらに前方の大型トラック(2)、大型トラック(3)、乗用車(4)が次々に衝突する計5台の車両が関係する多重追突事故。
<事故地点見取図>
この事故により、乗用車(1)の運転者と同乗者の計2名が死亡し、同車両の同乗者1名が重傷、大型トラック(2)、大型トラック(3)の運転者の計2名が軽傷を負った。追突した大型トラックの運転者と乗用車(4)の運転者に怪我はなかった。
報告書では、原因について事、大型トラックの運転者が見通しのよい下り坂の緩やかな左カーブの道路を約75km/hで走行中、前方不注意の状態で運転を継続したため、渋滞で停止中の車列に気付くのが遅れ、急ブレーキをかけるも間に合わず、追突したことで起きたものと推定される。
同運転者は、家庭の事情による悩みごとから、事故の約2カ月前から心理的ストレスを抱えており、比較的道路が空いていたことから、考え事をしながら運転を継続していたため、前方の安全に対する集中力が低下した漫然運転の状態となり、本事故地点の約18㎞手前から渋滞情報と速度規制(最高速度50km/h)が表示されていたにも関わらずこれに気付かず、また、渋滞で停止中の車両があるという認識もなく、規制速度を超える約75km/hで走行したことにより被害が拡大したものと考えられる。
事業者は、早朝・深夜に運行管理者等が不在となる時間帯があり、その時間帯は各運転者が運行管理者または運行管理補助者へLINEによるメッセージを送信することにより点呼の代わりとしており、点呼が適切に実施されていなかった。
運行計画は、運行途中での変更を運転者任せにし、運転者は事故当日の運行において、自らの判断で運行計画で予定していた地点で休息を取らず、先を急ぎ、運行を続けていた。
また、運転者の事故日前1カ月間の勤務において、拘束時間等の超過と休息期間の不足が多数確認され、運転以外に荷役作業も行っていた。
このように、事業者において、運転者の疲労の状況把握や必要な運行指示がなく、拘束時間等も超過する等運行管理が不適切であったことが本事故の背景にあった可能性が考えられると推定している。
運転者に対する指導監督において、毎月の安全会議後に個人面談を実施し、連続運転時間の超過や休息期間の不足について、各運転者に対して個別に指導をしていたものの、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の違反が繰り返されていたことから、運転者への個別の指導については、各運転者に指導内容を十分に理解させ、実践させるまでには至っていなかったと考えられるとしている。
また、事業者は、運転者が家庭の事情による悩みごとを抱えていたことを認識していたものの、悩みごとが心理的ストレスとなり、運行の安全に影響を及ぼすことについての認識が不十分であったため、運転者が運転に集中し安全に運行できるようにするための指導が十分に行われていなかったことも、本事故の背景にあるものと考えられるという。
再発防止策は
再発防止策として、報告書では、事業者について、運行管理が適切に行われていないことが甚大な被害を及ぼす事故を起こしかねないことを十分に認識し、運行管理者に対して業務の的確な実施と運行管理規程の遵守について、適切な指導と監督することを求めた。
さらに、「点呼は運転者が安全に運行できる状態であるかの確認と、安全運行のための指示と乗務後に運行結果を確認するために非常に重要な業務であることを十分理解させ、原則対面で確実に実施すること」とした。
対面で実施できない場合も、電話などにより運転者と直接会話することで安全に運行できる状態であるかの確認と指示を確実に行い、一方的な報告、指示、事後の確認となり得るメール等の手段により行わないことと促している。
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を遵守した乗務割と運行計画を作成し、その変更についても運転者任せにすることなく、運行管理者が運行計画を変更して運転者に対し適切な指示を行うこと。
さらに日々の乗務記録と運行記録を確認し、基準を遵守するとともに、運転者の疲労の蓄積・睡眠不足防止に努めるとともに、乗務割、運行計画を作成する際に、荷役作業の状況も考慮し、高速道路料金の深夜割引を利用するよう指示する場合は、利用できる時間帯を十分考慮した運行計画を作成するように指摘した。
加えて、安全運行のためには、運転者が運転に集中できることが重要であることを認識し、上司や同僚に悩みごとなどを相談し、問題解決への取組みができる、風通しの良い職場環境を醸成するとともに、積極的にストレスマネージメントの支援を行っていくように求めた。
なお、報告書は交通事故総合分析センターの事業用自動車事故調査委員会によってまとめられた。
■大型トラックの追突事故(山梨県甲州市)報告書
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001632975.pdf
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