国交省・多重下請構造検討会/商慣行打破「改正下請法・トラック適正化二法」の実効性確保を提言

2025年07月03日 13:34 / 経営

国土交通省は6月17日、「第4回トラック運送業における多重下請構造検討会」を開催し、検討会のとりまとめを公表した。

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国交省では、2024年8月「トラック運送業における多重下請構造検討会」を設置し、これまで3回にわたり、多重取引構造の背景や課題の検証やその是正に向けた対策について議論を重ねてきた。

とりまとめでは、「トラック運送業においては、長年多重取引構造が形成されていると言われ続けてきたものの、その発生原因については、繁忙期での運送や長距離輸送における地場運送の手配により生じるものとして、あたかも必要悪として語られてきた側面がある。しかしながら、実態調査で光が当てられたとおり、多重取引構造が形成される大きな要因は、長年に亘って積み重ねられてきた商慣行だった」と指摘した。

続けて「他方で、物流2024年問題への対応から生じた一連の社会の動きは、昨年の改正物流法、本年5月に成立した『下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律』、そしてトラック適正化二法など、様々な制度改正として結実してきており、多重取引構造を取り巻く環境は着実に変化している。長年業界に染みついた商慣行を打破する千載一遇の機会が到来していると言っても過言ではない。物流に停滞を生じさせないためにも、まずはこの機会を捉え、改正された各法令を着実に施行し、施行後の状況についてもフォローアップを行うとともに、これらの法令でもなお対象となっていないマッチング・取次等のあり方については、効率的・効果的なマッチングが多重取引構造の是正を促進する可能性があることを念頭に、更なる活用の可能性を見据えた上で、さらに検討を深めるべきである」と提言している。

また、「多重取引構造にまつわる商慣行は、必ずしも、荷主等に起因して直接的に生じたものではなく、トラック運送業界の中で蓄積されてきたものであり、その『積弊』を正すことはトラック運送事業者自身にも痛みをもたらしうる。しかしながら、そうした実態に目をつぶっていても、状況は何ら改善しない。着荷主も含めた荷主との商慣行のみならず、トラック運送事業者間の商慣行にも光を当ててこそ、トラック運送における取引の適正化を実現できるのであり、トラック適正化二法をはじめとしたこれまでの制度改正を踏まえたトラック運送業界自らの自戒や取組も必要となる。今こそ、官民を挙げて健全な競争環境を実現するときである」とトラック適正化二法など制度改正の実効性を確保することを求めた。

多重取引構造が形成される要因については、荷主や元請事業者等との力関係を背景に、自らが運送可能か否かにかかわらず、一旦運送を受託することが当然となっているといった、トラック運送を取り巻く根深い商慣行が存在していることが、検討会の実態調査で明らかとなった。

こうした商慣行は、立場の弱い側から変革していくことは困難であり、取引における力関係の実態を鑑みれば、自らの責任において荷主から運送を引き受け、その後の委託連鎖の最も川上の優位な立場として、多重取引構造全体を把握・統制し得る元請事業者が、当該構造全体の健全化のために中心的な役割を果たすことが適当と考えられる。

また、大規模な荷主である特定荷主に対する物流統括管理者の専任等の義務付けが2026年4月から始まる予定だ。義務付けを控えて、荷主側としても、自社のみならず、社会全体のサプライチェーンの効率化に向けたマネジメントへの意識を高めていく機運が高まってきている。このような中で、荷主とトラック事業者が協力してトラック物流の持続可能性を永続的に確保していくためには、荷主側においても、利用運送事業者のみに頼らない実運送事業者の顔が見える契約を原則とすることや、多重取引構造を前提としない輸送計画の作成、輸送の発注等、これまでの発注サイド側のみの一方的な意向の押しつけではないトラック事業者との協業の姿勢や、トラック適正化二法の成立も踏まえた対応や意識変革の加速化が併せて必要となる。

具体的には、発荷主のみならず着荷主も含めた荷主側においても、荷待ち・荷役時間の削減も含めたトラック輸送に係る適正コストの負担は当然のこととして、発注時の委託次数の制限や、出荷の平準化、同業他社との運送発注等の共同化や混載輸送の受入れ等を行うことによる積載率の向上、出荷時期の繁閑の平準化等を通じて、結果としての物流コストの効率化のメリットを享受することが期待できる。その実現のためには、現在検討が開始されている次期物流施策大綱において、物流統括管理者の専任等の荷主に対する義務付けに向けた施策と併せて検討を深めることが重要であると指摘した。

トラック運送業における多重下請構造検討会

トラック運送業における多重下請構造検討会とりまとめ

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