下請法/発荷主・運送事業者間「買いたたき」など増加で適用範囲の拡大検討
2025年03月03日 16:05 / 経営
公正取引委員会、中小企業庁は2月21日、「企業取引研究会 報告書」に対する意見募集の結果を公表し、下請法の対象となる取引を拡大する方向性を示した。
企業取引研究会は、適切な価格転嫁を新たな商慣習として定着させるための取引環境を整備する観点から、優越的地位の濫用規制の在り方について検討することを目的に設置されたもの。今後も公取委と中小企業庁は、報告書と寄せられた意見を踏まえ、引き続き下請法の改正の検討を進める。
■物流に関する商慣習の論点整理
報告書では、物流に関する商慣習の問題に関する論点を整理した。
運送事業者からは、「発荷主に対して、人件費を含む諸物価高騰のため運賃値上げの交渉をしたが、拒否されたため下請からの運賃値上げの要請にも応じられていない」、「発荷主に対して、荷待ち時間の待機料金を請求しようと交渉した際、『2時間くらい待つのは普通』と言われたが、契約を切られる可能性があったため、それ以上の交渉はできなかった」、「契約上は軒先渡しの条件にもかかわらず、着荷主のセンターで店舗別に仕分ける作業をさせられ、費用を負担してもらえない」といった声が取り上げられている。
前回(2003年)の下請法の主要な改正では、下請法の対象取引として役務提供委託を追加し、運送サービスについても元請運送事業者と下請運送事業者の取引を下請法の対象とした。他方で、着荷主と発荷主の間には通常、明示的な有償の運送契約等が結ばれないことから、発荷主から運送事業者への運送業務の委託は自家使用役務の委託取引と整理し、下請法の適用対象とはしなかった。
ただし、上流の取引が公正化されない限り取引の全体的な公正化は困難との問題意識の下、独占禁止法に基づく「物流特殊指定」を制定し、約20年間運用されてきた。
しかし、この間の遵守状況をみると、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為(買いたたき、代金の減額、支払遅延など)がみられた荷主は、物流特殊指定の施行直後にはごく少数(1~20名程度)であったが、近年は600名前後で高止まりしている。こうした状況を踏まえ、発荷主・運送事業者間における諸課題(買いたたき、契約にない荷役、長時間の荷待ち)に関する下請法における取扱いについて、見直すべき点はあるか検討を行った。
物流における取引関係は非常に複雑であり、明示的には発荷主と運送事業者が運送委託契約を結ぶが、実際には運送時期や荷姿などの条件を提示しているのは着荷主であり、その条件に基づき運送事業者が運んだり、作業せざるを得なかったりする構造がある。
「車上渡し」という契約であれば、着荷主側が荷物を下ろす作業をすべきであるが、実際には運送事業者のドライバーが着荷主に指示されて荷下ろし作業をしている。さらには倉庫の棚に荷物を入れる作業や仕分けする作業といった附帯作業についても実際にはドライバーが行う場合がある。
■研究会のおける主な意見
物流分野において下請法の適用対象取引を拡大すべきとの意見として、「着荷主と発荷主との間に部品等の製造や購入の発注だけでなく、その部品等を『運ぶ』契約も含まれており、発荷主はその債務の履行のために運送事業者に物の運送を委託する、という構造に着目すれば、下請法の対象とされている取引と類似の構造があるといえるのではないか」「現在、荷主と元請運送事業者との取引は物流特殊指定の対象、元請運送事業者と下請運送事業者との取引は下請法の対象とされているが、事業者にとって分かりにくく、統一的に下請法として対象とすることが望ましい」「法改正を行っていただきたいが、実情を踏まえた上での法改正が求められる」といった意見があった。
適用対象の拡大に慎重な意見では、「荷主からの運送委託について下請法の適用対象を広げる際には、規制の範囲が広くなりすぎないように配慮する必要がある。着荷主と発荷主の取引においては、物の運送が前提となることが多いものの、例えば『どこから』運ぶかは発荷主が決めており、完全な役務の再委託とはいえず、下請構造に該当するかどうかを慎重に判断する必要がある」「下請法では、役務の提供後60日以内の支払期日を定めることが義務付けられており、物流特殊指定から下請法に規制を切り替える場合には、資金繰り負担を始めとする発荷主の負担への配慮が必要である」といった声があった。
■解決の方向性
報告書は、「一般に、発荷主と着荷主との間の製造委託や販売等の契約において、発荷主が物を指定場所に納品すべきことが取り決められ、これを受けて、発荷主が運送事業者に対し運送業務を委託している。このような構造をとらまえれば、発荷主と運送事業者の取引についても、他の下請法の対象取引と同様のものと位置付けられる。また、発荷主と物流事業者との間でもなお長時間の荷待ちや契約にない荷役等の附帯業務の問題が生じているという課題があることを踏まえると、より簡易な手続により、迅速かつ効果的に問題行為の是正を図っていくことが必要である」と指摘。
その上で、「発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引の類型を新たに下請法の対象取引とすべきである。あわせて、新たに下請法の適用対象となる具体的な取引の内容や事業者の範囲を明確にした上で幅広く周知するなど、事業者の予見可能性の確保への配慮が必要である」と方向性を示した。
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