公取委など/「荷待ちや契約にない荷役の費用負担」で適正な契約を求める

2025年03月03日 16:11 / 経営

公正取引委員会と中小企業庁は2月21日、「企業取引研究会 報告書」に対する意見募集の結果を公表し、運送業務において荷待ちや附帯業務が生じた場合の費用の負担等について取り決め、適正な契約が結ばれるよう事業者への働きかけを行う必要があるとの方向性を示した。

その中で、研究会では直接の取引関係にない事業者間の課題(着荷主や発荷主と下請運送事業者との間における荷待ちや契約にない荷役(荷積み、荷下ろし)を強いられる問題)についても検討。

研究会では、「着荷主と発荷主との取引での価格転嫁が進んでいない中で、運送事業者から発荷主に対して価格転嫁の要請があっても対応が困難になりかねない。まずは、サプライチェーンの頂点となる着荷主に、価格転嫁や支払期日の短縮化等の行動変容が求められる」「契約関係が不明確であることが問題を引き起こしているため、サプライチェーンの各関係者の間で適切な契約関係が結ばれるような取組が必要。その上で、不合理な契約内容については法律に基づく執行を求めたい」といった意見があった。

また、「我が国の消費財取引では、納品先に商品を運ぶための費用が商品価格に含まれている『店着価格制』が一般的である。この中には荷積みや荷下ろしといった附帯作業に対する代金は明記されておらず、事実上、実運送事業者が負担する形になってしまっていることが多い。契約が曖昧になっていることのしわ寄せが実運送事業者に及んでいる」「着荷主と発荷主の間の契約において、契約条件を明確にし、発荷主の引渡し債務の範囲を明示することが重要。契約条件の明確化のために、モデル条項やモデル契約を作成し、具体的な契約条件を示すことが有用である」といった指摘がなされた。

解決の方向性として、独占禁止法や下請法は、取引関係がある当事者との間で適用されるため、取引関係がない当事者の問題には規律を及ぼすことが困難である。そのため、事業所管省庁の有する制度と連携して課題に対応する必要がある。

2024年5月に公布された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」による改正後の貨物自動車運送事業法においては、発荷主から運送事業者に運送を委託する場合は相互に、運送事業者間で運送を委託する場合は委託元の運送事業者から委託先の運送事業者に対し、運送の役務の内容とその対価等について記載した書面を交付する義務が課せられた。

書面の具体的な内容は、現在、国土交通省において検討中であるが、書面においては「運賃以外に附帯業務の内容とその対価を記載しなければならないこと」とされている。こうした事業法の枠組みによって国土交通省や荷主の事業所管省庁による業界に対する働きかけ等により、着荷主~発荷主間、発荷主~元請運送事業者間、元請運送事業者~実運送事業者間において、荷待ちや附帯業務が生じた場合の費用の負担等について取り決め、適正な契約が結ばれるよう事業者への働きかけを行っていく必要がある。

その上で、契約が、無償で荷積みや荷下ろしが強要されたり、指定された時間に運んだのに荷下ろし場所で長時間待たされたりするような行為を含む、不公正なものであるときには、「買いたたき」や「不当な経済上の利益の提供要請」の問題として、独占禁止法や下請法による対応も執り得るのではないかと指摘した。

そのほか、研究会における議論において、「着荷主と運送事業者間に明示的な契約関係がなくとも、着荷主の強い指示や管理の下で実運送事業者に役務提供をさせている実態がある場合、着荷主と運送事業者間に取引関係を認めて規制対象と整理することも考えられるのではないか」との意見もあった。

研究会においては、さしあたり各省連携による考え方を示したが、これ以外にも関係省庁の制度との連携も含めて、公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁が様々な可能性を追求していくことが求められると指摘した。

企業取引研究会報告書の概要

下請法/発荷主・運送事業者間「買いたたき」など増加で適用範囲の拡大検討

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