2024年問題/紙の帳票類受け渡しがドライバー業務を圧迫
2023年12月12日 16:25 / 経営
インフォマートは12月12日、物流業界で働く404名を対象に、2024年4月に適用される「時間外労働の上限規制」に伴って発生する「物流の2024年問題」に関する実態調査の結果を発表した。
2024年4月から「自動車運転業務」の時間外労働時間の上限が年間960時間に制限される。さらには改善基準告示の改正への対応により、ドライバーの拘束時間や休憩時間の基準がより厳しく制限されることになった。
現在、これら「物流の2024年問題」を目前に、運送業界は運賃交渉や労務管理への対応に追われているのが現状がある。そこで、インフォマートでは、IoTや運行システム等に埋もれて見過ごされがちな物流業界における「紙の書類」の現状と問題についても明らかにした。
調査によると、運送業の帳票類の受け渡しは半数近くが「すべて紙」、「紙と電子化が半々程度」も合わせると7割近くになった。バックオフィス部門だけでなくSD(ドライバー)や倉庫管理等の現場も書類作成業務に時間を取られており、現場業務の非効率につながっていることが分かった。
また、帳票類を電子化できない理由は「取引先やパートナーが紙で行っている」が主であり、小規模な事業者ほど対応が難しいのが現実である。しかし、電子化を進めた企業の多くは効果を得ており、なかでも「現場業務の効率化」と「残業時間の削減」、「コスト削減」という効果を実感している。
「物流の2024年問題」への対応策の中でも、帳票の電子化は比較的取り組みやすいテーマだと言える。今後、大きな課題になると世の中で叫ばれる「輸送能力の減少」も、帳票電子化による業務効率化で解決につながることが期待される。
<物流の2024年問題を理解しているか?>

調査では、まず、自動車運転業務における労働時間が規制されることで、国内全体の輸送能力が不足する「物流の2024年問題」について聞いた。「知っており内容を十分理解している」と回答した人は運送業(総合物流+道路貨物輸送)で33.9%、倉庫業(総合物流+倉庫)で34.8%となった。「知っており、ある程度の内容は理解している」まで含めると業界全体で7割以上が「物流の2024年問題について内容を理解している」という結果だった。「物流の2024年問題」への関心度は業界全体的に高いといえる。
<改善基準告示について理解しているか?>

また、「物流の2024年問題」の要因の1つに、2024年4月から適用される「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(通称:改善基準告示)」がある。改善基準告知について、「知っており内容を十分理解している」と「知っており、ある程度の内容は理解している」を含めた数字は、運送業で47.2%、倉庫業で45.7%と、過半数の人が内容をよく知らない状況だった。「改善基準告示」により自動車運転者の拘束時間の上限や休息期間等の規制が強化されるが、その認知度は「物流の2024年問題」よりも低い結果になった。
<物流の2024年問題で抱えている課題>

さらに、改善基準告示や残業上限規制によって生ずる「物流の2024年問題」において、運送業と倉庫業はそれぞれどのような課題を抱えているのかを調査した。運送業での課題は「労働時間の管理方法の見直し(49.7%)」「従業員の収入減少(40.6%)」「従業員の離職(37.4%)」がトップ3となった。これは、運送業ではドライバーの労務管理への対応がメインになるからだと考えられる。
倉庫業では、「運賃の値上げ・配送コストの増加(47.1%)」「荷役作業等、倉庫内作業負担の増加(31.1%)」「運送会社との交渉・契約の見直し(30.6%)」「燃料や資材高騰等のコストアップ(30.6%)」等が上位に入った。倉庫業では、全般的にコスト意識が高いことが分かった。運送コストの増加に伴うコスト・負荷増への懸念があると考えられる。
<物流の2024年問題で取り組んでいること>

続いて、「物流の2024年問題」に関連する対策について現在取り組んでいるものを聞いた。運送業での対策は「値上げ交渉(33.5%)」「荷役・荷待ち時間の交渉(22.6%)」「給与形態の見直し(21.3%)」「輸送方法そのものの見直しや変更(モーダルシフト)(21.3%)」の順に回答が多く集まった。ドライバーの稼働時間が短縮され、2023年4月から時間外労働の割増賃金率が一律50%になったこと等、人件費の増加により物流コストが上がることへの対策に焦点が当たっていると考えられる。
一方、倉庫業での対策は「荷役・荷待ち時間の見直し(34.5%)」「荷主や運送業者との料金交渉(28.6%)」「輸送方法そのものの見直しや変更(モーダルシフト)(22.8%)」がトップ3となった。倉庫業は、基本的にドライバーを抱えるのではなく倉庫(場所)貸しによって稼ぎを得るビジネスモデルであるため、いかに物流を効率化できるかに焦点が当たっていると考えられる。また、物流企業のコスト増を見込んで、荷主や運送業者との料金交渉を始めている様子もうかがえた。
<帳票類の受け渡し方法について>

また、各帳票の受け渡し方法について聞くと、運送業では最も電子化が進んでいる請求書でも47.7%が「すべて紙」と回答し、納品書は52.9%と半数以上が「すべて紙」と回答した。倉庫業でも請求書で41.7%、納品書では43.9%が「すべて紙」と回答した。業界内で根強く紙文化が残っており、それが現場業務を圧迫していると考えらる。
<帳票類を電子化したことによる効果>

そのほか、紙の書類を電子化している企業に対し、効果を聞いた。運送業、倉庫業共に「あてはまるものはない」が約2割であることから、約8割の企業が電子化によるなんらかの効果を実感している。運送業では「現場業務の効率化」が32.9%で1位となり、次いで「セキュリティの強化(31.4%)」と「事務業務の効率化(30.0%)」となった。
倉庫業においても、「印紙や郵送代等のコスト削減(40.2%)」、「事務業務の効率化(38.2%)」、「残業時間の削減(31.4%)」と続いた。業務が効率化されるだけでなく、印紙代や郵送代といったコスト削減にも貢献していることが分かった。
■調査概要
調査対象:総合物流業または道路貨物運送業または倉庫業の従事者
調査方法:インターネットリサーチ
調査内容:物流業界の2024年問題に関する実態調査
調査期間:2023年11月2日(木)~11月9日(木)
回答者 :404名
■物流業界の2024年問題に関する実態調査
https://lp.infomart.co.jp/logistics/download/001
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