NLJ/東大発企業と「みちびき」でCO2排出量を把握する実証実験を開始

2024年01月30日 16:23 / 施設・機器・IT

NEXT Logistics Japan(NLJ)は1月29日、東京大学発のスタートアップ企業で位置情報サービスを提供するLocatinMind(ロケーションマインド)と共同で、準天頂衛星システム「みちびき」の高精度位置情報と信号認証技術を利用したCO2排出量モニタリング支援ソリューションの実証実験を開始し、報道陣に公開した。

<実証実験に使用されるダブル連結トラック>

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この実証実験は、内閣府主催「2023年度みちびきを利用した実証事業」で採択されたもの。より正確なCO2排出量の算出と、位置情報の改ざんによるカーボンクレジット取引の不正リスクへの対処の2つを主な目的としており、将来的にはCO2の削減に加えて配送効率の向上などの効果も期待されている。

CO2排出量の算定手法として、資源エネルギー庁は燃料法、燃費法、トンキロ法を定めている。最もわかりやすいのは燃料使用量からCO2排出量を算定する燃料法だが、様々な荷物を混載する形態には適していないことから、NLJでは輸送距離と燃費からCO2排出量を算定(CO2排出量=輸送距離/燃費×CO2排出係数)する燃費法を採用している。

この燃費法の場合、輸送距離の情報が必要になるが、自動で走行距離データを残していくために使用されるGPSやGNSS(GPSを含めた複数衛星群による衛星測位システム)の位置情報は改ざんが容易なため、実際とは異なる燃費を意図的に作成できるのが問題となる。このため内閣府では、「みちびき」から配信される電子署名情報と受信機が予め保有する公開鍵を利用し、衛星からの正常な信号かどうかを判別する信号認証サービスを開始するが、今回の実証実験はこれを利用して行う。

ロケーションマインドの竹中誠プロジェクトマネージャーによると、GPS信号の信号の改ざん技術は、ドローンが多く使われているロシアのウクライナ侵攻から急速に進化したという。また民間では船舶で増えており、「実際には港から遠い場所にいる船が、港近くにいるように見せかけて入港・停泊の順番待ちに横入りする」等の被害が発生しているとのこと。トラックなど陸上での輸送ではまだ確認されていないが、今後、発生することが予想されることから、今回の取り組みは先手を打った格好だ。

実証では、「みちびき」のセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)と、GNSS測位信号の真正性を検証できる信号認証サービスに対応した受信機をNLJのダブル連結トラックに搭載。取得したデータはデータプラットフォームに送信され、データ加工を行って出力される。

<トラックに搭載されるシステム。左下にあるのがGNSS受信機>

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<トラックに装着されたアンテナ。受信機本体などは室内に装着される>

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現在NLJでは、11台のダブル連結トラックを神奈川県相模原市と兵庫県西宮市にあるNLJの拠点間で運行しているが、このうち6台に受信機を搭載し実際の商用ルートを走行して位置情報データを収集、精度の高いCO2排出量の推定と、位置情報の改ざんを防ぐことによる経済効果を推定する。データの収集は1月22日から開始したというが、現在のところ、高精度なデータが得られているという。

NLJの片平英司取締役は、今回の取り組みについて「CO2削減に取り組んでいる中で、改ざんという話がもし加わった時には、これは大変なことになる。カーボンクレジットに改ざんがあれば、金銭的にも影響が大きい。そこで共同で実証をスタートさせていただいた」と経緯を説明。「不正リスクのない位置情報を使ったCO2削減のデータを算出し、最適な情報を提供していきたい」と語った。

<NLJの片平英司取締役>

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またロケーションマインドの藤田智明氏は「位置情報の精度、信頼性を向上する仕組みの技術を、実際に事業として取り組み、新しいビジネスにつなげていきたい。様々な技術実績を今後も蓄えていきたいと考えており、その一つが物流領域での貢献です」と期待感を表した。

<ロケーションマインドの藤田智明Division Head of Space>

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なお、今回の実証実験は、2月まで走行データの分析を行い、CO2排出量の精度が検証される。

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