TuSimple/1000m先まで認識する自動運転トラックを公開

2023年09月28日 15:17 / 施設・機器・IT

米カリフォルニア州の自動運転トラック技術企業TuSimple Holdingsの日本支社であるTuSimple JAPAN(トゥーシンプルジャパン)は9月27日、レベル4自動運転に向けて実証実験中の自動運転トラックを、同社の海老名ラボ(神奈川県)で報道陣に公開した。

<実証実験中の自動運転トラック>

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TuSimpleは2015年に設立されたグローバル企業で、21年4月には自動運転企業として米国で初めて証券市場に上場(ナスダック)、21年12 月には米国で自動運転トラック世界初の完全無人走行テストも成功、米国では商用運転も開始しており、UPSなど20社近くの顧客に32万km以上の自動運転輸送サービスを提供している。

日本では、今年1月から東名高速道路で自動運転トラックの走行テストを開始。10月中には東京~名古屋間での自動運転トラック実証実験を完了させ、その後は大阪まで路線を延長、実証実験を重ねたうえで、実運用対応を進めていく計画としている。同社のナン・ウー代表取締役は、物流を支える多くの企業とTuSimpleの自動運転トラック技術で連携することで「2024年問題という社会課題の解決に貢献したい」と意気込みを見せる。

ちなみに同社が目指しているレベル4自動運転とは、自動運転レベル1~5のうち、上位から2番目で、限定条件下での完全自動運転を指し、同社の場合は高速道路に限定している。運転主体はシステムでドライバーは不要なため、高速道路の定められた区間であれば、無人で運行できることになる。なお最上位のレベル5は限定なし、つまり一般道も含めた全区間で自動運転が可能ということになるが、トラックでのレベル5実現は技術的な課題があまりにも多く、現時点では同社でもその実現は現実的ではないと見ている。

<TuSimple JAPANのナン・ウー代表(右)と小坂暢裕副社長(左)>

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同社の強みは、独自開発のマルチセンサフュージョンシステム。複数のLiDARやカメラを組み合わせることで車両の周囲360°を認識、さらに前方は1000m先まで認識できるというのが特徴だ。高精度だが検知距離の制約があるLiDARと、遠距離も見渡せる独自開発のカメラを組み合わせることで、高度な車両制御を可能にしている。もちろん、日本の高速道路では1000m先まで見渡せる環境はあまりないものの、可能な限り先の状況を認識することで、加減速や車線変更など余裕をもって対応でき、安定した運転が可能になる。

現在、実証実験を行っている車両は、日野の大型トラック・プロフィアがベース。取り付けられているセンサーは多く、キャビン上部にはカメラ8台、GNSS(全世界測位システム)センサー、LiDARが並び、フロント下部にも2つのLiDAR、両端にもLiDARをそれぞれ2つ、車両サイドにもLiDARとカメラ、後部にも3つのLiDARを備えている。日野プロフィアは標準でプリクラッシュセーフティシステム用のミリ波レーダーが装備されているが、これは自動運転システムには使用していないとのことであった。

<上部に並んだセンサー類>

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LiDARは回転式、ソリッドステート式を組み合わせて搭載しているのも特徴だ。ソリッドステート式は主に最長250mまでの測定が可能なコンチネンタルのARS4-Aを車両周囲に、前方上部には最長500mまで検知できるLivoxTELE-15を搭載。200m360°検知可能な回転式LiDARと組み合わせることで死角を排除し、非常に高精度なセンシングを実現している。詳細は説明されなかったが、これらの配置や組み合わせも、同社が積み上げてきたノウハウといえる。

<複数のLiDARを組み合わせている>

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カメラの2DデータとLiDARの3Dデータを組み合わせて解析し、車両を制御するサーバーは運転席の後ろに配置されている。運転席周りには自動運転の切替スイッチなどが備えられているが、その他はベース車と変わりはない。なお、自動運転中のデータは収集されるが、リアルタイムでのモニターは行っていないとのこと。アメリカではルート途中で通信が途切れる箇所があるため、技術的にも難しいという。ただ、日本では通信の心配はないので、導入する可能性はあるとしている。デモ当日は特別にリアルタイムの映像データも公開されたが、その走行は極めて安定していた。

<運転席の後ろに配置されているサーバー>

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現在は実証実験中という事もあり、走行テスト時はドライバーとサポートスタッフの2名が乗り、データ収集を重ねている。自動運転を行うのは高速道路上だけのため、高速道路までは通常のトラック同様、ドライバーが運転。高速道路まで到着するとスイッチを押して自動運転に切り替え、目的のインターチェンジまで自動運転で走行、高速道路を降りると再びドライバーの運転となる。なお、自動運転中にステアリングやアクセル、ブレーキを操作すると瞬時に自動運転から手動運転に切り替わるシステムとなっている。

<手前の黒いボックスが自動運転の切替スイッチ>

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アメリカではすでに商用運行も開始しているということもあり、日本でのレベル4自動運転の実用化も近いものと予想される。ただ国内物流業界の大きな課題であるドライバー不足に対応するには、同社が目指す無人自動運転の実現が不可欠であり、それには、高速道路に直結した物流施設の設置など、業界全体での対応が必要になる。同社では「幅広いパートナーと連携してソリューションを構築していきたい」(小坂副社長)としており、今後の業界全体での取り組みに期待されるところ。10月26日から始まるジャパンモビリティショー2023で同社も展示を行い、その一端が披露されるということなので、大いに注目したい。

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