公正取引委員会は、6月24日に発表した「荷主と物流事業者との取引に関する調査結果」の中で、独占禁止法上の問題につながるおそれのある主な事例を紹介した。

具体的には、「不当な給付内容の変更及びやり直し」「代金の支払遅延」「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」「代金の減額」「割引困難な手形の交付」「物の購入強制・役務の利用強制」の7つの行為ごとに事例を集めた。
「不当な給付内容の変更及びやり直し」では、荷主Aは、物流事業者に対し、定期便として発注した運送業務を集配送当日にキャンセルしたが、そのような突然のキャンセルに伴い物流事業者が負担した車両の手配に要した費用を支払わなかった。(飲食料品卸売業)
荷主Bは、物流事業者に対し、自組合の選果場から自組合の小売店舗までの農作物の運送を委託しているところ、当該物流事業者との間であらかじめ取り決めていた出発時間について、選果場における突然の設備故障のため一方的に遅らせる変更をしたが、その変更に伴い物流事業者が負担した追加費用(待機中の運転手の人件費等)を支払わなかった。(協同組合)
荷主Cは、物流事業者との間で、積込時間を朝からと取り決めていたにもかかわらず、実際には自社の都合で、到着時間を変更しないまま積込時間を昼からに変更したが、その変更に伴い物流事業者が負担した追加費用(待機中の運転手の人件費、到着時刻に間に合わせるために利用した高速道路通行料等)を支払わなかった。(建築材料、鉱物・金属材料等卸売業)
「代金の支払遅延」では、荷主Dは、物流事業者に対し、自社の事務処理が間に合わないことを理由に、あらかじめ定めた支払期日を超過して運賃を支払った。(飲食料品小売業)
荷主Eは、物流事業者に対し、自社の担当者が経理部門に請求書の回付を失念していたことを理由に、あらかじめ定めた支払期日を超過して運賃を支払った。(総合工事業)
「買いたたきの事例」では、荷主Fは、物流事業者から、それまで無償で提供させていた附帯業務の料金が上乗せされた見積書を受け取ったにもかかわらず、理由を一切説明することなく、運賃を一方的に据え置いた。(機械器具卸売業)
荷主Gは、物流事業者に対し、自社工場から自社が運営する飲食店舗までの食材等の運送を委託しているところ、労務費等のコスト上昇局面にあることを認識しながら、物流事業者から、運賃の引上げを要請されなかったため、労務費等のコスト上昇分の反映の必要性について、価格交渉の場において明示的に協議することなく運賃を据え置いた。(飲食店)
荷主Hは、物流事業者に対し、自社の電子部品の保管を委託しているところ、労務費等のコスト上昇局面にあることを認識しながら、物流事業者から保管料の引上げを要請されなかったため、エネルギーコスト等のコスト上昇分の反映の必要性について、価格交渉の場において明示的に協議することなく保管料を据え置いた。(機械器具卸売業)
「不当な経済上の利益の提供要請」では、荷主Iは、物流事業者に対し、契約では、運送の委託しかしていないにもかかわらず、運送した荷物の荷卸し、検品及び棚入れを無償で行わせた。(その他の卸売業)
荷主Jは、物流事業者に対し、自社工場で用いる機械部品を海外事業者から購入するに当たり、該当部品の荷揚げ港から自社工場までの運送を委託しているところ、該当運送業務に附帯して輸入通関業務を委託する際の関税・消費税の納付を立て替えさせた。(生産用機械器具製造業)
「代金の減額」では、荷主Kは、物流事業者に対し、理由を一切説明することなく、あらかじめ定めた運賃を一方的に減額して支払った。(物品賃貸業)
荷主Lは、物流事業者に対し、「値引き」と称して、あらかじめ定めた運賃を一方的に減額して支払った。(生産用機械器具製造業)
「割引困難な手形の交付」では、荷主Mは、物流事業者に対し、運賃として手形期間150日の約束手形を交付した。(機械器具卸売業)
「物の購入強制・役務の利用強制」では、荷主Nは、物流事業者に対し、自社が開催する展示会における家具の運送等の委託をする際に、自社製品を購入させた。(家具・装備品製造業)
荷主Oは、物流事業者に対し、自社のグループ会社が運営する給油所で運送車両の燃料を購入させた。(鉱業、採石業、砂利採取業)
■2024年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果及び優越的地位の濫用事案の処理状況について
公取委/荷主と物流事業者との取引調査「不当な給付内容の変更及びやり直し」が横行