北海道経済産業局/輸送を断られるなど輸送能力不足が一部顕在化

2025年05月08日 12:14 / 経営

経済産業省北海道経済産業局は4月28日、「物流の2024年問題による輸送力不足の実態調査」の結果を発表した。

調査は2月3日~14日、物流の2024年問題の影響による輸送能力不足の実態を把握するため、北海道内の業界団体会員事業者などを対象にオンラインで実施し、74事業者が回答したもの。

その結果、トラックドライバーの時間外労働規制を理由に輸送を断られるケースがみられるなど、物流の2024年問題の影響が一部顕在化していることが分かった。

<輸送能力不足の顕在化の有無>
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ドライバーの時間外労働が制限されることによる輸送能力不足(いわゆる「物流の2024年問題」)については、半数以上の事業者が、影響が顕在化していると回答。

<問題の具体的内容>
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具体的には、「物流費の増加」が最も多いほか、「輸送ができないリスクの増加」や「輸送距離の制限」、「輸送回数等の集約の必要」などの影響が顕在化していた。

<輸送能力不足を実感した場面>
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今年1月の状況を前年同月と比較すると、3割以上の事業者が輸送能力の不足を実感している。

具体的には、「運送依頼も人員不足のために断られたほか、複数者からの依頼のために順番待ちになったなど、トラック確保に苦慮している」「運送会社も地域に限られるため、運送依頼が集中し、対応してもらえない。依頼した車両台数に対応してもらえないこともある」「ドライバーの確保ができないことを理由として、運送会社から集荷日や納品日などの変更依頼が度々あった」「地方都市間における小ロット輸送の場合、一度、他荷物とともに札幌へ配送し、目的の地方都市へ配送するような事象が起きている」といった声があった。

また、「ユニック車や圧送車などの特殊車両は免許が必要となるため、ドライバー不足が特に顕著で取り合いになっている。また、どうしても片荷が多く、効率が悪いため、業務撤退や減車の動きもある」「昨年末頃から継続して、本州向けの荷物が満足に運べておらず、機会損失が発生している」「ドライバー不足によって、伐採により出た丸太を工場に運ぶことができず、山林現場に残ったままになってしまっている」といった事象もあった。

<時間外労働制限を理由として貨物輸送を断られた実績>
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さらに、約1割の事業者が、トラックドライバーの時間外労働が制限されていることを理由に、貨物の輸送を断られたことがあったと回答。

具体的には、「道東・道北方面から苫小牧・札幌エリアへの輸送など長距離のケースで断られたことがある」「特に北海道内の長距離輸送については、運送会社のトラクターヘッドなど慢性的に足りない状況で、確保できなかった」「大型特殊車両での長距離配送の依頼に対し、車両はあるものの、ドライバーがいないために対応してもらえなかった。ドライバーが短距離で割の良い業務に取られている傾向がある」「休祝日の配送や早朝に到着するために前日夕方に積み込みが必要となる場合に断られた」「ドライバー拘束時間の遵守のため、1日の運送回数や走行距離に制限ができ、運送依頼に対応してもらえない場面が多々あった」といった声があった。

そのほか、物流の2024年問題について、運賃が上がっても、燃料費高騰の影響により、ドライバーの賃上げにつながっていないなどの声があった。また、地方の集荷・配送や長距離輸送などが困難になること、物流が停滞しつつあることなど、北海道における今後の持続的な物流に対する懸念がもたれている。

価格上昇・価格転嫁等では、「運送会社の価格交渉には応じている一方、燃料費高騰の影響で、ドライバーの賃金上昇まで繋がっていないように感じる」「運転手不足等による物流費増に対し、急激なコスト増は受け入れられづらく、全ては転嫁できずに厳しい環境を強いられている」「納品において、期日指定が難しくなったこと、不在時の再配達への運賃加算が発生している」という課題が指摘された。また、「海上輸送へのモーダルシフトにより、内航船不足がみられるほか、港での船混み及や港を発着地とするトラック輸送に不足を感じる」という声もあった。

今後の物流への懸念として、「地方の集荷・配送などは、困難になるように感じている。地方部の人口減少は顕著で、都市部のように働き手がいない」「労働時間規制などにより、農産物の主要産地である道東・道北から玄関口の苫小牧までの長距離輸送が困難になりつつある」「労働時間規制によって、従前どおりドライバーが稼げなくなった結果、ドライバーが減り、物流が停滞しつつあるように感じる」との懸念もあった。

実態調査に回答のあった事業者の業種は、製造業が42%と最も多く、次いで、林業が28%、卸売業が12%、小売業が6%。従業員数では、50人以下の事業者が半数以上を占めており、資本金では、1億円以下の事業者が約7割となっている。

北海道経済産業局では、本調査の結果を受け、今後、一層の物流効率化を図り、北海道における持続的な物流の実現を図る。4月1日から改正物流効率化法が施行されていることを踏まえ、6月3日には、北海道農政事務所・北海道運輸局と合同で、荷主事業者向け“物流改正法に関する説明会”を開催する。

物流の2024年問題による輸送力不足の実態調査を実施しました

北海道運輸局/荷主事業者向け「物流改正法に関する説明会」6月3日WEB併用開催

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