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2023年11月02日 17:49 / 交通
国土交通省は10月24日に社会資本整備審議会「第59回国土幹線道路部会」を開催し、2050年の将来を見据えた高規格道路ネットワークに求められる役割や基本方針、留意点等について中間とりまとめ案を作成し、10月31日に公表した。
この「中間とりまとめ案」では、我が国の経済・社会の発展に不可欠な人と物の円滑な移動を確保していくためには、これまでの常識にとらわれない新たな発想が必要となる、としている。諸外国に比較して低い都市間連絡速度、渋滞等による時間ロス、港湾・空港・鉄道駅等の交通拠点と高規格幹線道路のアクセスの悪さ、災害に対する脆弱性などが大きな課題としてあり、加えて物流危機への対応も求められている。
注目は、この解決策の一つとして「自動物流道路(オートフロー・ロードAutoflow Road)の構築」が盛り込まれたこと。諸外国では道路を中心としたDX・GXなど道路空間を成長産業のインキュベーターとする取り組みが行われており、日本でも徹底したDX・GXの推進と技術創造で、道路ネットワークを多機能空間に進化させていくことが重要、としているが、その基盤が「自動物流道路」というわけである。
スイスは専用トンネル、イギリスはリニアモーターを活用
海外では、運輸部門からの温室効果ガスの排出抑制や将来的な物流需要の増加への対応から、新たな輸送形態の検討が進められている。中間とりまとめ案では「都市間の輸送においては人が荷物を運ぶという概念から、人は荷物を管理し、荷物そのものが自動で輸送される仕組みへの転換を図る」としており、日本でもこれらを参考にしつつ、検討を進めていく必要があるとしている。
特に「ハブ機能を持つ物流拠点の配置や配送に至るトータルの物流サービスを提供する視点から、ロジスティクス改革への貢献を考えていくことが重要である」としており、その一例として、中間とりまとめ案ではスイスとイギリスの事例を紹介している。
■スイス地下物流システム
物流専用道として主要都市を結ぶ地下トンネルを建設し、自動運転カートを走行させるというもの。
スイスでは貨物輸送量が2040年までに約4割増加すると予想されており、トラック輸送では限界があること、また貨物車の積載効率は低下傾向にあり、配送も各社が個別対応するので非効率なのが、その背景となっている。
地下20m~100mに総延長500kmの貨物専用トンネルを掘り、自動運転専用カートがトンネル内の3線のレーンを時速30km、24時間体制で走行するというシステムで、総工費約5兆円、2026年に建設を開始、2031年には第1期としてヘルキンゲン~チューリッヒ間約70km、11個のハブ(接続ポイント)を完成、2045年までに全線開通予定としている。
<スイス地下物流システム>
地下トンネルにはハブ(物流ターミナル)で垂直輸送され、ハブでは他の交通システムと接続。さらにデジタルマッチング技術で、効率的な貨物配送を実現するとしている。
■イギリスMagwayシステム
物流輸送用に開発した低コストのリニアモーターを使用した物流システム。
道路輸送に代わる安全かつ持続可能な代替手段という位置付けで、2025年までに許認可を取得し、2028年から2030年の運用開始を目標としている。
ロンドンの既存鉄道敷地内に全長16kmのMagway専用線を敷設し、西ロンドン地区の大型物流ハブ施設から各社の物流施設までの輸送を担う計画。
完全電気式・完全自動運転で、物流の脱炭素化と効率の向上、渋滞の緩和、汚染の軽減に軽減できるとしており、また既存の輸送手段と比べて、エネルギー効率が高く、オペレーションコストの削減が可能としている。
<イギリスのMagwayシステム>
「10年で実現」を提言
なお、中間とりまとめ案では「逼迫する物流需要を踏まえれば、こうした発想を実現していくスピード感が重要であり、通常であれば30年~50年とかかるパラダイムシフトを10年で実現する気概を持って当たることが重要である」としている。
道路輸送そのものを高効率化していくか、道路輸送の代替として異なる手法を進めていくか、まだ未知数ではあるものの、今後早急に基本方針を定め、実現化していく必要に迫られている。今回の中間とりまとめ案で示された内容が、どのように具現化されていくか、注目されるところである。